公的医療保険制度とは?4つの種類と対象者をわかりやすく解説
公的医療保険制度とは、病気やケガをした時に医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことです。最も一般的な制度は、医療費の3割負担でしょう。
しかし、他の制度に関しては知らない方が多いのではないでしょうか。
この記事の要点
- 1.公的医療保険制度とは、病気やケガで受診したときにかかる医療費の一部を健康保険などが負担してくれる制度です。
- 2.医療費の窓口負担が3割になるだけでなく、休業や出産などに対しても経済的負担を軽減してくれる制度があります。
- 3.国民全員が公的医療保険制度に加入していますが、加入先によって受けられる給付は異なります。
- 4. 公的医療保険制度に加えて民間の医療保険にも入っておくと、病気や怪我などで困ったときに経済的支えになるでしょう。
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公的医療保険制度とは?
公的医療保険制度によってどんなメリットがあるかを解説する前に、まずは、制度の概要と対象者について確認しましょう。
公的医療保険制度とは
公的医療保険制度に加入している証として健康保険証が交付され、病院で受診するときに提示を求められます。
また、患者の医療費負担を抑えるために国や地方公共団体、勤務先の企業などが公的医療保険にかかる費用の一部を負担しています。
引用:厚生労働省「我が国の医療保険について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
公的医療保険制度の対象者
公的医療保険制度の保険料を支払っていない会社員の妻や子どもも制度の対象となります。
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公的医療保険制度の種類
公的医療保険制度は保険者(制度を所管する機関)によって次の4つに分類できます。
ポイント
- 国民健康保険(都道府県や市区町村、国民健康保険組合)
- 健康保険(健康保険組合や全国健康保険協会)
- 共済組合(各共済組合)
- 後期高齢者医療制度(市区町村が加入する後期高齢者医療広域連合)
※()内は各制度の保険者
※上記以外にも船員や日雇い労働者を対象とする公的医療保険制度がありますが、本解説では省略します。
引用:厚生労働省「我が国の医療保険について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
制度ごとの主な対象者(以下、被保険者)は下記の通りです。
公的医療保険制度の被保険者 | |
公的医療保険制度 | 被保険者 |
国民健康保険 | 自営業者とその家族、年金生活者 など |
---|---|
健康保険 (健康保険組合) | 主に大企業に勤務する会社員 |
健康保険 (全国健康保険協会) | 主に中小企業に勤務する会社員 |
共済組合 | 公務員 |
後期高齢者医療制度 | 75歳以上の人 |
健康保険や共済組合では、被保険者本人だけではなく被扶養者(配偶者や子どもなど)も公的医療保障を受けることができます。
一方、自営業者の家族などは子どもを含めてそれぞれが国民健康保険に加入して保険料を納付する必要があります。
健康保険の種類
- 組合健保:大企業(またはグループ企業など)が単独で設立した健康保険組合が所管する健康保険
- 協会けんぽ:中小企業などが加入する全国健康保険協会が所管する健康保険
\もしもの時の備えに不安があるなら/
高額療養費制度とは
高額療養費の上限額は年齢と年収で決まる
高額療養費の上限額は年齢と年収で決まります。
年齢の区分
- 70歳未満
- 70歳以上
70歳未満の人の上限額
70歳未満の人の高額療養費の上限額は次の通りです。
表は横にスライドできます
所得区分別の上限額 | ||
所得区分 | 上限額 | 多数該当 |
区分ア 健保:標準報酬月額83万円以上 国保:年間所得901万円超 | 25万2,600円+(医療費-84万2,000円)×1% | 14万100円 |
---|---|---|
区分イ 健保:53万円以上79万円未満 国保:600万円以上901万円以下 | 16万7,400円+(医療費-55万8,000円)×1% | 9万3,000円 |
区分ウ 健保:28万円以上50万円未満 国保:210万円以上600万円以下 | 8万100円+(医療費-26万7,000円)×1% | 4万4,400円 |
区分エ 健保:26万円以下 | 5万7,600円 | 4万4,400円 |
区分オ(低所得者) (市区町村民税の非課税者等) | 3万5,400円 | 2万4,600円 |
区分オ(低所得者)は、1か月の医療費がいくら高額になっても自己負担額は最大3万5,400円です。
(高額療養費制度のイメージ図)
引用:厚生労働省「我が国の医療保険について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
区分イの人で高額の医療費が連続した場合、4回目以降の上限額は9万3,000円になります。
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70歳以上の人の上限額
70歳以上の人の高額療養費の上限額は次の通りです。
表は横にスライドできます
所得区分別の上限額 | ||
所得区分 | 上限額 | 多数該当 |
①現役並み所得者Ⅲ 健保:標準報酬月額83万円以上 国保:課税所得690万円以上 | 25万2,600円+(医療費-84万2,000円)×1% | 14万100円 |
---|---|---|
①現役並み所得者Ⅱ 健保:53万円以上79万円以下 国保:課税所得380万円以上 | 16万7,400円+(医療費-55万8,000円)×1% | 9万3,000円 |
①現役並み所得者Ⅰ 健保:28万円以上50万円以下 国保:課税所得145万円以上 | 8万100円+(医療費-26万7,000円)×1% | 4万4,400円 |
②一般所得者 ①③以外の人 | 5万7,600円 | 4万4,400円 |
③低所得者Ⅱ (低所得者Ⅰ以外の非課税者等) | 2万4,600円 | ー |
③低所得者Ⅰ (市区町村民税の非課税者・課税所得のない世帯) | 1万5,000円 | ー |
上記以外にも、高額な医療費や介護費の負担を軽減するために次の制度が設けられています。
高額療養費以外の制度
- 上記所得区分②、③に該当する人に対する「70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費」
- 医療保険と介護保険の自己負担額が所定の金額を超えたときの「高額介護合算療養費」
\もしもの時の備えに不安があるなら/
参考:全国健康保険協会「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費」
高額療養費の申請は限度額適用認定証がおすすめ
高額療養費制度を利用する方法は次の2つです。
ポイント
- 事後に手続きする (高額療養費を支給申請)
- 事前に手続きする (「限度額適用認定証」を利用)
それぞれについて見ていきましょう。
事後に手続きする (高額療養費を支給申請)
事後の手続きとは、先に病院で医療費を支払い、事後に高額療養費制度による還付を受ける方法です。
手順は次の通りです。
高額療養費制度による還付を受ける手順
- 病院で医療費の自己負担分を支払う。
- 加入する公的医療保険に「高額療養費支給申請書」を提出する。
- 後日、加入する公的医療保険から上限額超過分の還付を受ける。
申請書や記入見本は全国健康保険協会の「健康保険高額療養費支給申請書」をご参照ください。
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事前に手続きする (「限度額適用認定証」を利用)
事前の手続きとは、医療費を支払う前に加入する公的医療保険に申請(限度額適用認定申請)することです。
この手続きにより、病院窓口では高額療養費の上限だけを支払えばよくなります。手順は次の通りです。
限度額適用認定証申請の流れ
- 加入する公的医療保険に「限度額適用認定申請書」を事前に提出する。
- 公的医療保険から「限度額適用認定証」が交付される。
- 病院窓口で「限度額適用認定証」と健康保険証を提示し、高額療養費の上限だけを支払う。
申請書や記入見本は、全国健康保険協会の「健康保険限度額適用認定申請書」を参照ください。
傷病手当金とは
傷病手当金とは、病気やケガで仕事ができず報酬がないときに健康保険から支給される給付金です。
ただし、傷病手当金の対象になるのは次に該当するケースです。
傷病手当金の対象になる事項
- 健康保険(健康保険組合や協会けんぽ、共済組合)の被保険者である。
- 病気やケガの原因が業務外である。
また、業務上の病気やケガの場合は、労災保険からの支給となります。
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傷病手当金の4つの支給要件
傷病手当金の支給を受けるには次の4要件を満たす必要があります。
療養のためであること
1つ目の要件は、病気・ケガの療養のために休業していることです。
仕事につけないこと
2つ目の要件は、仕事につけないことです。
前要件と同様に医師の証明により判断しますが、「前の仕事はできないが簡単な作業ならできる」というケースも労務不能と判断されます。
4日間以上連続して仕事を休んだこと
3つ目の要件は、4日間以上連続して仕事を休んだことです。
注意点
- 休業開始から3日間は「待期期間」として、傷病手当金は支給されません。
- ただし、土日・祝日などは待期期間に含まれます。
給料が支払われていないこと
4つ目の要件は、事業主から給料が支払われていないことです。
給与の支払いがある場合、傷病手当金の額より給料のほうが少なければ差額だけ支給されます。
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傷病手当金の支給額と支給期間
傷病手当金の支給額と支給期間は次の通りです。
傷病手当金の支給額と支給期間
- 1日あたりの支給額:標準報酬月額の2/3
- 支給期間:傷病手当金が初めて支給された日から最長1年6ヵ月間
また、次の給付が受けられるとき、傷病手当金は受給できません。
傷病手当金の受給対象外の場合
- 出産手当金が受けられるとき
- 老齢年金が受けられるとき
- 障害厚生年金または障害手当金が受けられるとき
- 労災保険から休業補償給付を受けられるとき
傷病手当金の給付が上記給付を上回る場合は、その差額分を傷病手当金として受け取れます。
傷病手当金の支給申請方法
傷病手当金は、「傷病手当金支給申請書」を加入している公的医療保険に提出して申請します。
申請書や記入見本は全国健康保険協会の「健康保険傷病手当金支給申請書」を参照ください。
協会けんぽの申請書なので、実際に申請するときは加入する健康保険の申請書をご使用ください。
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出産育児一時金と出産手当金
出産に伴って健康保険から支給されるのが「出産育児一時金」と「出産手当金」です。
それぞれについて解説します。
出産育児一時金は出産費用に対する助成
出産には多額の費用がかかりますが、公的医療保険の医療費3割負担は適用されません。
出産育児一時金の支給額と支給要件
出産育児一時金の支給額と支給要件は次の通りです。
出産育児一時金の支給額と支給要件
- 支給額:子ども1人あたり42万円(産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産の場合は40.4万円)
- 支給要件:妊娠4か月(85日)以上で出産をしたこと
出産には、早産や死産、流産、人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含む)も含まれます。
出産育児一時金の支給申請方法
出産育児一時金の支給を受ける方法は、「直接支払制度」または「受取代理制度」のどちらかを利用します。
ポイント
- 直接支払制度:
病院と代理契約合意文書を交わすだけで公的医療保険への申請は不要です。病院が支払機関を経由して健康保険に請求してくれます。
- 受取代理制度:
出産予定日の2ヶ月前以降に公的医療保険へ事前申請すると、病院が公的医療保険に出産育児一時金の請求をしてくれます。
出産した病院によってどの制度を利用するか決まりますが、どちらの場合も自分で出産費用全額を支払うことはありません。
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出産手当金は産休中の休業補償
注意点
- 健康保険(健康保険組合や協会けんぽ)の被保険者であることが前提ですから、被保険者の被扶養者や国民健康保険の人には支給されません。
- また、産休中に会社から給与が支払われていれば出産手当金はもらえません。
出産手当金の支給額と支給期間
出産手当金の支給額と支給期間は次の通りです。
出産手当金の支給額と支給要件
- 1日あたりの支給額:標準報酬月額の2/3
- 支給期間:出産の日(※1)以前42日(※2)から出産の翌日以後56日目までの間で会社を休んだ期間
(※1)実際の出産が予定日後のときは出産予定日
(※2)多胎妊娠の場合は98日
出産手当金の支給申請方法
出産手当金は、「出産手当金支給申請書」を健康保険に提出して申請します。
会社が手続きを代行してくれることもあります。
申請書や記入見本は、全国健康保険協会の「健康保険出産手当金支給申請書」をご参照ください。
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まとめ
公的医療保険制度とは、病気やケガで受診したときにかかる医療費の一部を健康保険などが負担してくれる制度です。
医療費の窓口負担が一般的に3割になるだけでなく、休業や出産などに対しても経済的負担を軽減してくれる制度があります。
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国民全員が公的医療保険制度に加入していますが、加入先によって受けられる給付は異なります。
病気などで困ったときに経済的支えになる制度なので、いざというときに困らないようにどんな制度があるかは覚えておきましょう。
・本コンテンツは情報の提供を目的としており、保険加入その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
・本コンテンツは商品の概要を説明しています。
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