自転車保険の義務化とは?入らないと罰則がある?対象地域も確認
手軽な移動手段として利用される自転車ですが、時に他人の命を奪ってしまう危険性を持っていることも忘れてはいけません。
近年の自転車事故の増加を鑑みて、自転車保険の加入を義務化する地域が広がっています。
今回の記事では、自転車保険の加入義務化について解説します。
この記事の要点
- 自転車保険の加入義務化とは、地方自治体の条例による義務化のことです。
- 令和5年4月1日時点の国土交通省の調査によると、42都道府県において条例で自転車保険加入を「義務」または「努力義務」としています。
- 自転車保険加入が義務である地域で自動車保険に入らなかった場合、条例による罰則はありません。
- ただし、自転車事故による損害賠償は数千万円になるケースもあるため、自転車保険は必要です。
- 自転車保険に加入する際は、「ほけんのぜんぶ」をはじめとする保険相談窓口で専門家と相談しながら検討しましょう。
この記事は5分程度で読めます。
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自転車保険の義務化とは?
最初に、自転車保険の加入義務化について基本知識を確認します。
自転車保険の加入義務化とは地方自治体の条例による義務化
自転車事故における被害者救済の観点から、国では自転車利用者の自転車損害賠償責任保険等への加入促進を図っています。
ポイント
ただし、国が法律を設けて自転車保険の加入を義務化しているのではなく、各地方自治体が条例によって義務化しているのです。
令和5年4月1日時点では、42都道府県において条例による義務化が実施されています。
参考:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進に関する標準条例」
自転車保険義務化の対象者
自転車保険義務化の対象者は次の通りです。
ポイント
- 日常生活で自転車を利用している個人
- 未成年者を監護する保護者(自転車を利用する子を持つ保護者)
- 事業活動のために自転車を利用している事業者
- 自転車貸付業者(シェアサイクル会社やレンタサイクル会社など)
個人・法人を問わず自転車を利用する人は、自転車保険義務化の対象となります。
地方自治体ごとの義務化の状況
前述の通り、全ての地方自治体が自転車保険加入義務化の条例を設けている訳ではありません。
義務化の状況は地方自治体の条例によって次の3つに分類できます。
ポイント
- 義務化:自転車保険加入を義務とする
- 努力義務化:自転車保険加入を努力義務とする
- なし:義務も努力義務もない
「義務」は守らなければ条例違反となりますが、「努力義務」の場合は努めるだけで実際に自転車保険に加入しなくても条例違反にはなりません。
各都道府県の義務化の状況は次の通りです。
義務化 | 宮城県、秋田県、山形県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、 兵庫県、奈良県、愛媛県、福岡県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 |
---|---|
努力義務化 | 北海道、青森県、茨城県、千葉県、富山県、和歌山県、鳥取県、徳島県、香川県、高知県、佐賀県 |
条例を設けていない | 岩手県、新潟県、福島県、栃木県、石川県、福井県、岐阜県、岡山県、広島県、島根県、山口県、長崎県、沖縄県 |
参考:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」
義務化された自転車保険に入らないとどうなる?
居住する都道府県で自転車保険加入義務化の条例が定められているにもかかわらず、自転車保険に入らないとどうなるのでしょうか。
法律上の罰則と事故を起こした時の責任について見ていきましょう。
自動車保険に入らなくても条例上の罰則はない
自転車保険加入を義務づける条例が定められている地方自治体では、自転車保険に入らないと条例違反になります。
ポイント
- しかし、条例には罰則が設けられていないため、もし自転車保険に加入していなくても罰せられることはありません。
- 条例で努力義務が定められている地方自治体では、条例違反にもなりません。
自転車で事故を起こした場合、損害賠償義務が生じる
自転車を利用しているときに他人にケガをさせた場合、条例による罰則はありませんが刑事上・民事上の責任を負う可能性があります。
自転車による事故の状況と損害賠償例を紹介します。
自転車関連の事故件数
自転車関連の事故は、全交通事故件数の2割以上を占めます。
自転車関連の事故件数 | 全交通事故件数に占める割合 | |
2010年 | 15万1,683件 | 20.9% |
---|---|---|
2011年 | 14万4,062件 | 20.8% |
2012年 | 13万2,051件 | 19.9% |
2013年 | 12万1,040件 | 19.2% |
2014年 | 10万9,269件 | 19.0% |
2015年 | 9万8,700件 | 18.4% |
2016年 | 9万0,836件 | 18.2% |
2017年 | 9万0,407件 | 19.1% |
2018年 | 8万5,641件 | 19.9% |
2019年 | 8万0,473件 | 21.1% |
2020年 | 6万7,673件 | 21.9% |
参考:日本損害保険協会「知っていますか?自転車の事故 ~安全な乗り方と事故への備え~」(以下も同様)
自転車乗用中の死傷者数のうち約半数は、20歳未満の若年層(27.1%)と65歳以上の高齢者(20.8%)です。
自転車乗車中の死傷者の年齢 | 全年齢に占める割合 |
14歳以下 | 9.9% |
---|---|
15歳以上19歳以下 | 17.2% |
20歳以上24歳以下 | 6.9% |
25歳以上29歳以下 | 6.2% |
30歳以上39歳以下 | 11.7% |
40歳以上49歳以下 | 12.5% |
50歳以上59歳以下 | 10.8% |
60歳以上64歳以下 | 4.0% |
65歳以上 | 20.8% |
2020年の自転車関連の事故6万7,673件のうち、自転車による加害事故は1万3,982件で自転車事故全体に占める割合は20.7%でした。
自転車による加害事故の内訳は次の通りです。
法令違反の種類 | 自転車による加害事故全件に占める割合 |
安全運転義務違反 | 58.3% |
---|---|
一時不停止 | 16.0% |
交差点安全進行義務違反 | 6.7% |
信号無視 | 6.2% |
優先通行妨害 | 2.4% |
通行区分違反 | 1.7% |
徐行違反 | 1.5% |
歩行者妨害 | 1.5% |
その他 | 5.7% |
自転車による加害事故の6割近くを占める「安全運転義務違反」には次が該当します。
安全運転義務違反事項
- ハンドル操作不適
- ブレーキ操作不適
- 前方不注意
- 動静不注視
- 安全不確認 など
自転車に対しても道路交通法が適用されるため、ルールに違反した自転車運転をしていると刑事上の処分を受ける可能性があります。
自転車事故による損害賠償例
自転車による事故で他人にケガなどを負わせた場合、刑事上の罰則だけでなく民事上の損害賠償請求を受けるリスクもあります。
事故に対する責任の程度や相手方の損害状況によっては、損害賠償額が数千万円になるケースもあります。
日本損害保険協会の調べによると、自転車による加害事故の裁判で5,000万円以上の損害賠償請求が認められたケースは次の通りです。
表は横にスライドできます
判決容認額 | 事故の概要 | 判決 |
9,501万円 | 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。 | 神戸地方裁判所、2013年7月4日 |
---|---|---|
9,330万円 | 男子高校生が、夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。 | 高松高等裁判所、2020年7月22日 |
9,266万円 | 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。 | 東京地方裁判所、2008年6月5日 |
6,779万円 | 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。 | 東京地方裁判所、2003年9月30日 |
5,438万円 | 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。 | 東京地方裁判所、2007年4月11日 |
「自転車だから大きな事故にはならない」と思いがちですが、実際には自転車による死亡事故や大きなケガを負わせる事故も発生しています。
場合によっては、数千万円の損害賠償請求を受けることもあるため、自転車保険義務化の条例の有無に関係なく自転車事故への備えが必要です。
自転車保険の選び方
次に、自転車による事故に備える自転車保険の選び方について説明します。
自転車保険の補償内容
自転車保険による補償は主に次の2つです。
ポイント
- 相手方(被害者)への補償
- 自分自身の補償
「相手方(被害者)への補償」は、自転車関連の事故の責任が自分にあり相手方が死傷するなどの損害を被った場合、相手方へ損害賠償するものです。
損害賠償金額は、前述の「自転車事故による損害賠償例」で紹介した通り数千万円になることもあります。
自転車保険では、相手方への補償と自分自身の補償がセットになっているのが一般的です。
また、自転車事故によって自転車が破損した場合の補償はありません。
自転車保険の選び方
自転車保険を選ぶときは、次の手順で最適な自転車保険を見つけましょう。
自転車保険の選び方ポイント
- 補償が適用される人を決める
- 損害賠償の上限額を決める
- その他の補償内容を決める
自転車保険には「個人型」と「家族型(ファミリープラン)」の2種類があります。
最初に、本人しか自転車を利用しない場合は「個人型」、本人とその家族が利用する場合は「家族型」を選択します。
「家族型」の補償範囲は、同居の親族(6親等以内)と別居の未婚の子、であるのが一般的です。
自転車事故による損害賠償例より、1億円以上で設定することをおすすめします。
ポイント
補償額が大きいと感じるかもしれませんが、自転車保険の保険料は毎月数百円であるため保険料負担はあまり大きくはなりません。
最後に、自分自身の補償やその他の内容を決めます。
自分自身の死亡や入院に対する備えは、生命保険にしっかり入っていればあまり気にする必要はありません。
その他の補償には、「示談代行サービス賠償事故解決特約」、「法律相談費用補償特約」、「弁護士費用等補償特約」などがあります。
自転車保険を選ぶ際の注意点
自動車保険を選ぶ際の主な注意点は次の3つです。
ポイント
- 自転車保険の補償範囲を正しく選択する
- 損害賠償の上限額を1億円以上にする
- 他の保険と重複加入しないように気をつける
「自転車保険の補償範囲」は、自転車を利用する人に応じて「個人型」か「家族型」かを正しく選択しましょう。
「損害賠償の上限額」は、万一に備えて1億円以上にしましょう。保険料の負担は大きくありません。
自動車保険などに加入する際によくあるのは、気づかないうちに自転車事故に対する補償に加入していることです。
例えば加入する際に、個人賠償責任保険を特約付加しているケースなどです。
ポイント
- 個人賠償責任保険は、日常生活における偶然の事故で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりして法律上の賠償責任を負った場合の補償です。
- 自転車事故で他人にケガをさせたり他人の物を壊した場合も適用されるため、個人賠償責任保険に加入していれば新たに自転車保険に加入する必要性は低いです。
個人賠償責任保険がセット(セットするかどうかは任意で選択)される保険は次の通りです。
- 自動車保険
- 火災保険
- 傷害保険 など
また、自転車の購入や整備点検時に自転車の本体にかける保険(TSマーク付保険)には、個人賠償責任保険がセットされています。
そのほか、クレジットカードのサービスとして個人賠償責任保険が附帯されているケースもあるので確認してみましょう。
まとめ
自転車保険の加入義務化とは、地方自治体の条例による義務化のことです。
自転車事故における被害者救済の観点から、各地方自治体が条例による義務化を進めています。
令和5年4月1日時点では、42都道府県において条例で自転車保険加入を「義務」または「努力義務」としています。
自転車保険加入が義務である地域で自動車保険に入らなかった場合、条例による罰則はありません。
ただし、自転車事故による損害賠償は数千万円になるケースもあるため、自転車保険は必要です。
自転車保険の加入を検討する際、自動車保険などの特約として個人賠償責任保険に加入していないかチェックしましょう。
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