生命保険料控除とは?種類や対象、計算法をわかりやすく解説
今回の記事では、生命保険料控除の種類や対象、生命保険料控除によって安くなる税金の計算方法について解説します。
この記事を読むと、生命保険料控除の仕組みと節税額が理解できます。
この記事の要点
- 1.生命保険料控除は、所得税・住民税の計算の際に所得金額から1年間に支払った生命保険料の一定額を差し引ける制度です。
- 2.生命保険料控除は、平成23年12月31日以前と平成24年1月1日以降で旧制度と新制度になり適用される控除額等が異なります。
- 3.生命保険料控除によって、所得税と住民税が安くなりますが多数の特徴がありますので把握しておくことが肝心です。
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目次
生命保険料控除とは?わかりやすく解説します
所得控除を受けることで課税所得が小さくなり、所得税や住民税が安くなるのです。
所得控除15種類
- 基礎控除
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 障害者控除
- ひとり親控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
参考:国税庁「所得金額から差し引かれる金額(所得控除)」
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生命保険料控除の種類は契約始期によって異なる
生命保険料控除の種類は、加入している保険の契約始期によって2パターンに分けられます。
契約始期が平成24年1月1日以降の保険は次の3種類です。
平成24年1月1日以降の保険
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
契約始期が平成23年12月31日以前の保険は次の2種類です。
平成23年12月31日以前の保険
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
生命保険料控除の対象となる保険
生命保険料控除の対象となる保険は、特約のない単品の保険の場合は次の通りです。
生命保険料控除の対象となる保険
- 「一般生命保険料控除」の対象:定期保険、終身保険、収入保障保険 など
- 「介護医療保険料控除」の対象:医療保険、がん保険、介護保険 など
- 「個人年金保険料控除」の対象:個人年金保険
ただし、特約が付加された保険については、3種類の生命保険料控除のうちどれに該当するかは、特約ごとに異なります。
ポイント
- 定期保険(主契約)の保険料:「一般生命保険料控除」の対象
- 入院特約の保険料:「介護医療保険料控除」の対象
3種類の生命保険料控除に該当する主契約・特約は次の通りです。
生命保険料控除の種類 | 主契約・特約の種類 |
一般生命保険料控除 | 定期保険 |
終身保険 | |
収入保障保険 | |
介護医療保険料控除 | 医療保険 |
がん保険 | |
介護保険 | |
災害・疾病・生活習慣病・がん入院特約 | |
三大疾病保障特約 | |
先進医療特約 | |
個人年金保険料控除 | 個人年金保険 |
生命保険料控除の対象外 | 災害割増特約 |
傷害特約 |
※「保険期間が5年未満の貯蓄保険」や「外国生命(損害)保険会社と国外で締結したもの」、傷害保険、財形貯蓄などは対象外。
参考:国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」
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個人年金保険料控除を受けるときの注意点
「個人年金保険料控除」を受けるには、次の要件を満たす必要があるので注意しましょう。
個人年金保険料控除を受ける条件
- 個人年金保険に「税制適格特約」が付加されていること
- 年金受取人は保険契約者またはその配偶者のいずれかであること
- 年金受取人は被保険者と同一人であること
- 保険料払込期間は10年以上であること
「税制適格特約」は個人年金保険加入時に付加するのが一般的ですが、中途付加することもできます。
「生命保険料控除の対象」の確認方法
「生命保険料控除の対象」は、加入している生命保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」でも確認できます。
どの種類の生命保険料控除に該当するか、1年間に支払った保険料(支払予定を含む)などが記載されています。
(生命保険料控除証明書の見本)
引用:三井住友海上あいおい生命保険「2019年「生命保険料控除証明書」をお届けします」
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生命保険料控除の計算方法
それでは、生命保険料控除の計算方法についてみていきましょう。
生命保険料控除の上限金額
生命保険料控除の金額は、保険料をたくさん支払ったほうが大きくなりますが上限金額が定められています。
生命保険料控除の上限金額
- 3種類の生命保険料控除の合計:上限金額12万円
- 一般生命保険料控除:上限金額4万円
- 介護医療保険料控除:上限金額4万円
- 個人年金保険料控除:上限金額4万円
3種類の生命保険料控除の金額がすべて上限の4万円ならば、生命保険料控除によって上限金額の12万円の所得控除を受けることができます。
生命保険料控除の計算方法
3種類の生命保険料控除の金額は、1年間(1月~12月)に支払ったそれぞれの保険料により次の通り計算されます。
年間保険料 | 生命保険料控除の金額 |
2万円以下 | 保険料全額 |
2万円超4万円以下 | 保険料×1/2+1万円 |
4万円超8万円以下 | 保険料×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
実際に、生命保険料控除の金額を計算してみましょう。
- 1年間の生命保険料が1万5,000円の場合:控除金額は、保険料全額の1万5,000円
- 1年間の生命保険料が3万円の場合:控除金額は、3万円×1/2+1万円=2万5,000円
- 1年間の生命保険料が6万円の場合:控除金額は、6万円×1/4+2万円=3万5,000円
- 1年間の生命保険料が9万円の場合:控除金額は、一律4万円(上限金額)
生命保険料控除は住民税の計算にも適用されますが、控除金額は次の通り所得税と異なります。
年間保険料 | 生命保険料控除の金額 |
1万2,000円以下 | 保険料全額 |
1万2,000円超3万2,000円円以下 | 保険料×1/2+6,000円 |
3万2,000円超5万6,000円以下 | 保険料×1/4+1万4,000円 |
5万6,000円超 | 一律2万8,000円 |
所得税と同様に、住民税の生命保険料控除の金額を計算してみましょう。所得税の場合と比較して控除金額は小さくなります。
- 1年間の生命保険料が1万5,000円の場合:控除金額は、1万5,000円×1/2+6,000円=1万3,500円
- 1年間の生命保険料が3万円の場合:控除金額は、3万円×1/2++6,000円=2万1,000円
- 1年間の生命保険料が6万円の場合:控除金額は、一律2万8,000円(上限金額)
- 1年間の生命保険料が9万円の場合:控除金額は、一律2万8,000円(上限金額)
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保険料控除による節税額の計算方法
それでは、生命保険料控除によってどれだけ所得税や住民税が節税できるのでしょうか。
節税額の計算方法についてみていきましょう。所得税や住民税の計算方法は次の通りです。
所得税や住民税の計算方法
- 課税所得金額=所得金額-生命保険料控除金額など
- 所得税額(住民税額)=課税所得金額×所得税率(住民税率)
まず、所得金額から生命保険料控除金額やほかの所得控除金額を引いて、課税所得金額を算出します。
次に、課税所得金額に所得税率や住民税率を掛ければ、所得税額(または住民税額)が計算できます。
生命保険料控除により課税所得金額は減少するので、節税額は生命保険料控除の金額にそれぞれの税率を掛ければ計算できます。
ポイント
節税額=生命保険料控除金額×所得税率(住民税率)
実際に、どれだけ節税できるかを年収別のモデルケースで計算してみましょう。
モデルケース1(年収900万円)
まずは、次のケースで節税額を計算します。
- 年収900万円の会社員(所得税率20%、住民税率10%)
- 年間保険料:一般生命保険料10万円、介護医療保険料4万円
節税額は、次の順で計算します。
- 生命保険料控除の金額を計算(所得税と住民税のそれぞれについて、生命保険料控除の種類ごとに算出)
- 節税額を計算(所得税と住民税のそれぞれについて、節税額=すべての生命保険料控除金額×税率を計算)
①生命保険料控除の金額を計算
- 一般生命保険料の控除金額(所得税):一律4万円
- 一般生命保険料の控除金額(住民税):一律2万8,000円
- 介護医療保険料の控除金額(所得税):4万円×1/2+1万円=3万円
- 介護医療保険料の控除金額(住民税):4万円×1/4+1万4,000円=2万4,000円
②節税額を計算
- 所得税の節税額:(4万円+3万円)×20%=1万4,000円
- 住民税の節税額:(2万8,000円+2万4,000円)×10%=5,200円
- 節税額の合計:1万4,000円+5,200円=1万9,200円
モデルケース2(年収500万円)
次に、年収を500万に変えて節税額を計算します。
- 年収500万円の会社員(所得税率10%、住民税率10%)
- 年間保険料:一般生命保険料10万円、介護医療保険料4万円
①生命保険料控除の金額を計算(計算方法はモデルケース1と同様)
- 一般生命保険料の控除金額(所得税):4万円
- 一般生命保険料の控除金額(住民税):2万8,000円
- 介護医療保険料の控除金額(所得税):3万円
- 介護医療保険料の控除金額(住民税):2万4,000円
②節税額を計算
- 所得税の節税額:(4万円+3万円)×10%=7,000円
- 住民税の節税額:(2万8,000円+2万4,000円)×10%=5,200円
- 節税額の合計:7,000円+5,200円=1万2,200円
モデルケース1とモデルケース2の比較から次のことがわかります。
ポイント
- 生命保険料の控除額は、年収によって変わらない。
- 節税額は、税率の高い人(年収の多い人)が大きくなる。
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生命保険料控除の旧制度と新制度の違い
平成24年1月1日に生命保険料控除の制度が変更になりました。変更前を「旧制度」、変更後を「新制度」といい、加入する保険の契約始期によって適用される制度が異なります。
ポイント
- 契約始期が平成23年12月31日以前の保険:旧制度を適用
- 契約始期が平成24年1月1日以降の保険:新制度を適用
旧制度と新制度の主な違いは次の通りです。
旧制度と新制度の違い
- 生命保険料控除の「種類」「上限金額」「対象」
- 生命保険料控除の「計算方法」
それぞれについて見ていきましょう。
生命保険料控除の「種類」「上限金額」「対象」の違い
「旧制度(契約始期が平成23年12月31日以前)」の生命保険料控除の「種類」「上限金額」は次の通りです。
- 一般生命保険料控除(所得税5万円、住民税3.5万円)
- 個人年金保険料控除(所得税5万円、住民税3.5万円)
「新制度(契約始期が平成24年1月1日以降)」は前述したように次の通りです。
- 一般生命保険料控除(所得税4万円、住民税2.8万円)
- 介護医療保険料控除(所得税4万円、住民税2.8万円)
- 個人年金保険料控除(所得税4万円、住民税2.8万円)
※()内は所得控除できる上限金額。
生命保険料控除の「対象」については、新制度の「一般生命保険料控除」と「介護医療保険料控除」を合わせたものが、旧制度の「一般生命保険料控除」に該当します。
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生命保険料控除の「計算方法」の違い
新制度の生命保険料控除の「計算方法」は前述の通りですが、旧制度については次のようになります。
年間保険料 | 生命保険料控除の金額 |
2万5,000円以下 | 保険料全額 |
2万5,000万円超5万円以下 | 保険料×1/2+1万2,500円 |
5万円超10万円以下 | 保険料×1/4+2万5,000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
年間保険料 | 生命保険料控除の金額 |
1万5,000円以下 | 保険料全額 |
1万5,000円超5万円以下 | 保険料×1/2+7,500円 |
5万円超10万円以下 | 保険料×1/4+1万7,500万円 |
10万円超 | 一律3万5,000円 |
平成24年1月1日の改正で、「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の上限金額は5万円から4万円に縮小しましたが、生命保険料控除全体でみれば、上限金額は10万円から12万円に拡大しました。
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まとめ
生命保険料控除は、所得税・住民税の計算の際に所得金額から1年間に支払った生命保険料の一定額を差し引ける制度です。
平成24年1月1日以降の生命保険料控除は、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類で、所得控除の上限額は各控除4万円、合計で12万円です。また、平成23年12月31日以前の保険には旧制度が適用されます。
生命保険料控除によって、所得税と住民税が安くなりますが次の特徴があるので覚えておきましょう。
- 生命保険料控除の金額は、保険料をたくさん支払ったほうが大きくなるが上限金額がある。
- 生命保険料控除による節税額は、税率の高い人(年収の多い人)が大きくなる。
・本コンテンツは情報の提供を目的としており、保険加入その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
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