人生100年時代を迎え、老後の生活資金に対する関心が高まっていますが、もう1つ気になるのが親や自分の介護費用のことです。
「介護費用は平均いくらかかる?」「もしも介護費用が払えなかったらどうすればいい?」と不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、介護費用の相場(平均額)について詳しく解説します。
この記事の要点
- 生命保険文化センターの調査によると、介護の初期費用は平均74万円で、毎月の費用は8.3万円かかるとされています。
- 介護期間は平均5年1か月(61.1か月)で、介護費用総額は約600万円にのぼるとも言われています。
- 介護費用が予測以上に高額になった場合、高額介護サービス費や高額介護合算療養費などを活用することで、介護に伴う経済的なリスクを最小限に抑えられます。
- ただし、「直接的な介護費用以外の出費や収入減に対応できるか不安」「より手厚く介護に備えたい」という方は民間の介護保険も検討すると良いでしょう。
- 介護保険をはじめとする老後資金に不安がある方は、無料保険相談窓口「ほけんのぜんぶ」で専門家に相談してみることをおすすめします。
この記事は5分程度で読めます。
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介護費用は平均いくらかかる?
生命保険文化センターの調査によると世帯主または配偶者が要介護状態となった場合、調査対象者が「必要と考える介護費用の平均」は次の通りです。
介護費用の平均額
- 初期費用:平均74万円
- 毎月の費用:平均8.3万円
かなり高額ですが、実際にはどうでしょうか。詳細なデータをみていきましょう。
介護の初期費用は平均74万円
生命保険文化センターの「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に要した費用のうち住宅改造や介護用ベッドの購入などの初期費用の平均額は74万円です。
編集部
初期費用の分布
金額 | 割合 |
50万円未満 | 16.1% |
50〜100万円未満 | 10.9% |
100〜200万円未満 | 26.1% |
200〜300万円未満 | 11.2% |
300〜500万円未満 | 9.0% |
500〜1,000万円未満 | 7.9% |
1,000〜2,000万円未満 | 4.7% |
2,000万円以上 | 1.0% |
不明 | 13.3% |
不明の人を含めて全体の半数以上は初期費用が100万円未満だと思われますが、100万円以上かかった人も意外に多くいます。
【要介護度別】初期費用
要介護度 | 初期費用 |
要支援1 | 101万円 |
要支援2 | 37万円 |
要介護1 | 39万円 |
要介護2 | 61万円 |
要介護3 | 98万円 |
要介護4 | 48万円 |
要介護5 | 107万円 |
公的介護保険の利用経験なし | 90万円 |
公的介護保険の利用経験あり | 74万円 |
参考:生命保険文化センター「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査(P173)」(以下、同様)
毎月の介護費用は平均8.3万円
介護に要した費用のうち、毎月の介護費用は平均8.3万円です。「必要と考える介護費用」の平均15.8万円よりは少なくて済みます。
毎月の介護費用の分布
金額 | 割合 |
0円 | 0.0% |
1万円未満 | 4.3% |
1万〜2万5千円未満 | 15.3% |
2万5千〜5万円未満 | 12.3% |
5万〜7万5千円未満 | 11.5% |
7万5千〜10万円未満 | 4.9% |
10万〜12万5千円未満 | 11.2% |
12万5千〜15万円未満 | 4.1% |
15万円以上 | 16.3% |
不明 | 20.2% |
全体の1/3近くは毎月の介護費用が5万円未満ですが、10万円以上かかった人も30%ぐらいいます。
【要介護度別】毎月の介護費用
要介護度 | 毎月の介護費用 |
要支援1 | 4.1万円 |
要支援2 | 7.2万円 |
要介護1 | 5.3万円 |
要介護2 | 6.6万円 |
要介護3 | 9.2万円 |
要介護4 | 9.7万円 |
要介護5 | 10.6万円 |
公的介護保険の利用経験なし | 6.9万円 |
公的介護保険の利用経験あり | 8.3万円 |
要介護度別の初期費用については要介護度と平均額の相関はあまり明確ではありませんでしたが、毎月の介護費用については要介護度が重くなると明らかに費用は大きくなります。
特に、要介護3以上については毎月10万円前後と、経済的負担はかなり大きくなります。
介護期間は平均5年1か月(61.1か月)、介護費用の総額は約600万円
介護費用を考える上で、初期費用や毎月の介護費用と同じくらい重要なのが介護期間です。毎月の介護費用があまり大きくなくても、長期間続くと経済的負担は大きくなります。
生命保険文化センターの調査によると、介護期間は平均5年1か月(61.1か月)です。
介護期間の分布
期間 | 割合 |
6か月未満 | 3.9% |
6か月以上1年未満 | 6.1% |
1年以上2年未満 | 10.5% |
2年以上3年未満 | 12.3% |
3年以上4年未満 | 15.1% |
4年以上10年未満 | 31.5% |
10年以上 | 17.6% |
不明 | 3.0% |
初期費用と毎月の介護費用、介護期間の各平均数値を使って、介護費用の総額を計算すると次の通りです。
- 介護費用の総額=初期費用(74万円)+毎月の介護費用(8.3万円)×介護期間(61.1か月)=581.1万円
編集部
在宅介護でかかる費用は?
次に、在宅介護にかかる費用について見ていきましょう
在宅介護にかかる費用項目
在宅介護にかかる主な費用は次の通りです。
在宅介護にかかる主な費用項目
- 介護用品:車椅子や介護用ベッドの購入費やレンタル費
- 訪問介護:介護福祉士などによる入浴・排せつ・食事の介助、買い物、食事作り など
- 訪問入浴介護:介護福祉士などによる入浴サービス
- 訪問リハビリテーション:理学療法士や作業療法士によるリハビリ
- 通所介護(デイサービス):デイサービス施設での介護サービス
- 通所リハビリ(デイケア):デイケア施設での理学療法士や作業療法士によるリハビリ
- 短期入所生活介護(ショートステイ):介護施設での、宿泊を伴う食事・入浴・排せつなどの全般的な介護サービス
- 短期入所療養介護:介護老人保健施設や療養病床のある病院での、宿泊を伴う治療や医療を主とした介護サービス など
当然のことですが、要介護状態に関係なく食事や娯楽などの日常生活費用も必要です。
在宅介護の毎月の介護費用は平均4.8万円
前述の生命保険文化センターの調査では、在宅介護の場合の毎月の介護費用は平均4.8万円です。
一方、介護施設を利用した場合の介護費用は平均12.2万円と2.5倍以上になります。
介護場所別の介護費用(毎月の平均)
表は横にスライドできます
金額 | 在宅介護 | 施設利用 | 全体 |
0円 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
1万円未満 | 7.2% | 0.4% | 4.3% |
1万円〜2万5千円未満 | 22.3% | 6.3% | 15.3% |
2万5千円〜5万円未満 | 17.6% | 4.7% | 12.3% |
5万円〜7万5千円未満 | 13.3% | 9.1% | 11.5% |
7万5千円〜10万円未満 | 2.3% | 8.7% | 4.9% |
10万円〜12万5千円未満 | 4.3% | 20.9% | 11.2% |
12万5千円〜15万円未満 | 1.2% | 7.9% | 4.1% |
15万円以上 | 5.8% | 30.7% | 16.3% |
不明 | 26.0% | 11.4% | 20.2% |
毎月の平均介護費用 | 4.8万円 | 12.2万円 | 8.3万円 |
在宅介護の場合は半数以上が毎月の介護費用が5万円未満である一方、施設利用の場合は5万円未満の人は1割程度です。
ただし、在宅介護の場合でも、毎月の介護費用が高額になるケースも一定程度あります。
施設に入所する場合にかかる介護費用は?
介護施設を利用した場合の平均的な介護費用は月12.2万円ですが、利用する施設によって費用は大きく異なります。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は、社会福祉法人や地方自治体が運営する介護施設です。主な特徴は次の通りです。
特別養護老人ホームの特徴
- 介護保険が適用されるため、料金が比較的安い
- 対象者は原則65歳以上で要介護度3~5であること
- 入居一時金はなく、負担は月々の利用料のみ
- 入居希望者が多く、なかなか入所できない
また、特別養護老人ホームには次の3種類があります。
- 広域型特別養護老人ホーム:定員が30名以上、居住地も関係なく入所できる
- 地域密着型特別養護老人ホーム:定員が29名以下、地域に根差した小規模な老人ホーム
- 地域サポート型特別養護老人ホーム:対象は在宅介護を受けている高齢者、24時間年中無休の見守り体制で都道府県が認定した事業所がサービスを提供
特別養護老人ホームの費用
特別養護老人ホームの費用は、主に介護サービス費・居住費・食費・日常生活費の4つです。
注意点
ただし、化粧品や嗜好品、娯楽関係の費用などは含まれないため別途費用が必要です。
特別養護老人ホームの費用では、所得に応じて「居住費(賃料)」と「食費」の負担限度額が設けられています。
また、利用する部屋のタイプ(個室や大部屋など)によって「居住費(賃料)」の負担限度額は異なります。
部屋のタイプ別の介護費用(介護サービス費+居住費+食費)は次の通りです。介護サービス費は要介護度によって異なります。
部屋のタイプ | 介護費用(介護サービス費+居住費+食費) |
従来型個室 | 9.7万円~10.1万円 |
多床室 | 8.8万円~9.2万円 |
ユニット型個室 | 12.5万円~12.9万円 |
ユニット型 個室的多床室 |
11.5万円~11.9万円 |
※ユニットは10人以下の小グループのこと。ロビーやダイニング、キッチン、浴室、トイレをユニット単位で共有して共同生活。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
有料老人ホーム
有料老人ホームは、民間が運営する高齢者施設で種類は様々です。健康で介護が不要な人が利用する有料老人ホームもあります。
有料老人ホームの種類
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
- ケアハウス など
ここでは、介護付き有料老人ホームについて紹介します。
介護付き有料老人ホームとは、都道府県から「特定施設入所者生活介護」の指定を受けた介護施設のことで、主な特徴は次の通りです。
介護付き有料老人ホームの特徴
- 対象者は「要介護者」
- 施設によって費用やサービスの内容が異なる
- 特別養護老人ホームと比較して費用が高額
有料老人ホームの費用
「みんなの介護」のサイトに掲載されている介護付き有料老人ホームの平均的な費用は次の通りです。
- 入居一時金:平均 42.9万円
- 毎月の介護費用:平均19.5万円
引用:みんなの介護「介護付き有料老人ホームとは?サービス内容と知っておきたい入居条件」
平均値を紹介しましたが、介護付き有料老人ホームの費用は地域やサービス内容によって大きく異なります。
編集部
介護費用が払えない場合どうする?
要介護認定を受けた人は各種介護サービスを受けることができますが、介護サービス費用の1割(所得によっては2割または3割)は自己負担です。
この自己負担分が高額となり介護費用を払えない場合、費用を一定額に抑える仕組みが「高額介護サービス費」と「高額介護合算療養費」です。
1か月の介護費用が高額になった場合は「高額介護サービス費」
1か月の介護保険サービスの自己負担額が所定の限度額を超えると、超過分は払い戻しされます。
編集部
所定の限度額は2021年8月に改正され、所得区分に応じて次の通りとなりました。
高額介護サービス費の限度額
表は横にスライドできます
所得区分 | 限度額(1か月) | |
課税所得690万円以上(年収約1,160万円) | 14万100円(世帯) | |
課税所得380万円以上課税所得690万円未満 (年収約770万円) |
9万3,000円(世帯) | |
市村民税課税・課税所得380万円未満 (年収約770万円) |
4万4,400円(世帯) | |
世帯全員が市町村民税非課税 | 2万4,600円(世帯) | |
世帯全員が市町村民税非課税かつ 合計所得金額80万円以下 |
2万4,600円(世帯) 1万5,000円(個人)※ |
|
生活保護を受給している人等 | 1万5,000円(世帯) |
※1か月の世帯単位の介護費用が2万4,600円以下でも、個人の介護費用が1万5,000円を超えると高額介護サービス費が払い戻しされる
年収約770万円未満の世帯は1か月4万4,400円が上限、市町村民税非課税の世帯は2万4,600円が上限です。
医療費用と介護費用の合計が高額になった場合は「高額介護合算療養費」
「高額介護サービス費」と似た仕組みで、医療費には1か月の医療費用が所定の限度額を超えると超過分が払い戻しされる「高額療養費制度」があります。
両制度は医療費用や介護費用の経済的負担を抑えるためのものですが、医療と介護が両方必要な場合やそれぞれが長期間続くと負担は大きくなります。
このようなケースで役に立つのが「高額介護合算療養費」という仕組みです。
高額介護合算療養費とは?
毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額が所定の基準額を超えると、超過分は「高額介護合算療養費」として払い戻しされます。
所定の基準額は、年齢と所得区分によって次の通りです。
高額介護合算療養費の基準額(70歳未満)
表は横にスライドできます
所得区分 | 基準額(1年) | |
「標準報酬月額83万円以上」または 「報酬月額81万円以上」 |
212万円 | |
「標準報酬月額53万~79万円」または 「報酬月額51万5千円以上~81万円未満」 |
141万円 | |
「標準報酬月額28万~50万円」または 「報酬月額27万円以上~51万5千円未満」 |
67万円 | |
「標準報酬月額26万円以下」または 「報酬月額27万円未満」 |
60万円 | |
(低所得者)被保険者が市区町村民税の非課税者等 | 34万円 |
高額介護合算療養費の基準額(70歳以上)
表は横にスライドできます
所得区分 | 基準額(1年) | |
「標準報酬月額83万円以上」または 「報酬月額81万円以上」 |
212万円 | |
「標準報酬月額53万~79万円」または 「報酬月額51万5千円以上~81万円未満」 |
141万円 | |
「標準報酬月額28万~50万円」または 「報酬月額27万円以上~51万5千円未満」 |
67万円 | |
「標準報酬月額26万円以下」または 「報酬月額27万円未満」 |
56万円 | |
(低所得者)被保険者が市区町村民税の非課税者等 | 31万円 | |
収入が年金のみの場合、1人暮らしで約80万円以下、 2人世帯で約160万円以下等 |
19万円 |
70歳未満で「標準報酬月額26万円以下」または「報酬月額27万円未満」の人は、年間の医療費用と介護費用の自己負担額合計は最大 60万円に抑えられます。
介護費用に関するよくある質問
まとめ
今回は、「介護費用は平均いくらかかる?」「もしも介護費用が払えなかったらどうすればいい?」と不安を抱えている人に向けて、介護費用の相場(平均額)について詳しく解説しました。
まず、覚えておきたい介護費用の平均額は以下の通りです。
介護費用の相場
- 初期費用:74万円
- 毎月の介護費用:8.3万円(在宅介護は4.8万円、施設利用の場合は12.2万円)
- 介護期間:5年1か月(61.1か月)
- 介護費用の総額:約600万円
介護費用が高額になった場合には、「高額介護サービス費」や「高額介護合算療養費」を利用することで、負担を一定額に抑えることができます。
ただし、これらの制度を利用するには申請が必要ですので、手続きを忘れずに行いましょう。
編集部