個人年金保険料控除とは、自分が支払った年金保険料を税金から差し引いてもらう制度で、年末調整や確定申告の手続きを通じて利用されます。
個人年金保険料控除を利用すると、税金の負担が減り、老後の資金準備に役立てられます。しかし、「控除でいくら税金が戻るのか」「控除の上限はいくらなのか」「利用するための条件は何か」など、疑問に思う方も多いでしょう。
そこで本記事では、個人年金保険料控除の適用条件や計算方法、上限について徹底解説します。
この記事のポイント
- 個人年金保険料控除とは、加入している個人年金保険に支払った年間の保険料を、その年の所得から差し引くことで所得税・住民税の節税効果を得られる制度のことです。
- 控除される金額は新制度の場合、所得税は最大4万円、住民税は最大2万8,000円となっています。
- 控除を活用するためには「年金受取人が被保険者と同一人であること」「保険料の払込期間が10年以上であること」など、いくつかの条件を満たす必要があります。
- 個人年金保険のメリットを最大限活かすためにも、分からないことがあれば保険相談窓口「ほけんのぜんぶ」で知識豊富な専門家に相談しましょう。
この記事は5分程度で読めます。
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個人年金保険料控除とは
編集部
生命保険料控除とは
生命保険料控除制度が導入された背景
- 死亡や病気・ケガなどは、年齢・性別に関係なく発生するリスクがあります。
- そのため、そのリスクに経済的な面から備えられる生命保険は、国民に不可欠となりました。
- 国民が必ず加入すべき保険にかかる保険料の負担を、少しでも軽減するために生まれたのが生命保険料控除です。
編集部
生命保険料控除の種類
生命保険料控除の制度内容は、平成24年1月1日から新制度へと変わりました。
ここでは個人年金保険料控除を含めた、新制度と旧制度の生命保険料控除の種類をまとめます。
新制度(保険契約が平成24年1月1日以降の保険の場合)
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
- 介護医療保険料控除
旧制度(保険契約が平成23年12月31日以前の保険の場合)
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
編集部
生命保険料控除の種類ごとの対象保険
上記で確認したように、生命保険料控除の種類が分かれているのは、それぞれの控除で対象となる保険が異なるためです。
具体的には、次のように分類されています。
生命保険料控除の種類 | 主契約・特約の種類 |
一般生命保険料控除 | 定期保険 |
終身保険 | |
収入保障保険 | |
学資保険 | |
個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約なし) | |
介護医療保険料控除 | 医療保険 |
がん保険 | |
介護保険 | |
災害・疾病・生活習慣病・がん入院特約 | |
三大疾病保障特約 | |
先進医療特約 | |
個人年金保険料控除 | 個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約あり) |
参考:国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」
編集部
表にある「個人年金保険料税制適格特約」とは何かについては、後述の「個人年金保険料控除の条件」で解説します。
個人年金保険料控除の上限
個人年金保険料控除の上限額は、所得税・住民税の税種や新旧制度によって異なります。以下の表に示した通り、保険料の金額に応じて控除額が決まります。
個人年金保険料控除の上限 | ||
税種 | 年間保険料 | 控除額 |
所得税(新制度) | 8万円超〜 | 4万円 |
住民税(新制度) | 5万6,000円超〜 | 2万8,000円 |
所得税(旧制度) | 10万円超〜 | 5万円 |
住民税(旧制度) | 7万円超〜 | 3万5,000円 |
繰り返しになりますが、控除額の限度額は一般生命保険料控除や介護医療保険料控除とも同じです。
控除額の具体例
例えば、平成25年に加入した個人年金保険の年間保険料が9万円の場合、所得税に対する個人年金保険料控除額は4万円となります。
個人年金保険料控除の条件
個人年金保険料控除は、単に個人年金保険に加入しているだけでは適用されません。
編集部
個人年金保険料税制適格特約を付加するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
個人年金保険料税制適格特約を付加するために必要な条件
- 年金の受取人が契約者またはその配偶者であること
- 年金受取人が被保険者と同一人物であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 確定年金または有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であり、かつ受取期間が10年以上であること
(参考:第一生命「個人年金保険料税制適格特約条項」)
個人年金保険料控除の条件詳細
個人年金保険料税制適格特約を付加するための、個人年金保険の契約者、被保険者、年金受取人は、夫を契約者とした場合、次の2パターンしかありません。
個人年金保険料税制適格特約を付加できるパターン
- 契約者:夫・被保険者:夫・年金受取人:夫
- 契約者:夫・被保険者:妻・年金受取人:妻
編集部
また個人年金保険の保険料払込期間は10年以上です。
個人年金保険には一括払いなどがありますが、利用すると個人年金保険料税制適格特約を付加できません。
編集部
確定年金と有期年金の特徴 | ||
確定年金 | 有期年金 | |
特徴(共通点) | あらかじめ決められた一定期間、年金を受け取れる | あらかじめ決められた一定期間、年金を受け取れる |
違い | 年金受取人が死亡していても、遺族が受け取れる | 年金受取人が死亡している場合は、年金を受け取れない |
個人年金保険料税制適格特約の注意点
また個人年金保険料税制適格特約には、次のような注意点があります。
個人年金保険料税制適格特約の注意点
- 個人年金保険料税制適格特約だけを解約することはできない
- 個人年金保険料税制適格特約を付加した後に、条件を満たさない契約内容に変更できない
- 年金額の減額など、契約内容の変更による返戻金は、契約途中で受け取ることができない
- その場合は、所定の利息をつけて積み立てられ、年金受取開始日に増額年金の買い増しに充てられる
編集部
個人年金保険料控除の計算方法
控除額は生命保険料控除の種類別にそれぞれ同じです。
ただし所得税と住民税、新制度と旧制度で異なるため、それぞれを表でまとめていきます。
新制度の所得税の個人年金保険料控除額の計算方法
年間保険料 | 個人年金保険料控除の金額 |
2万円以下 | 保険料全額 |
2万円超〜4万円以下 | 保険料✕1/2+1万円 |
4万円超〜8万円以下 | 保険料✕1/4+2万円 |
8万円超〜 | 一律4万円 |
3種類の合計控除額 (上限額) |
12万円 |
新制度の住民税の個人年金保険料控除額の計算方法
年間保険料 | 個人年金保険料控除の金額 |
1万2,000円以下 | 保険料全額 |
1万2,000円超〜3万2,000円以下 | 保険料✕1/2+6,000円 |
3万2,000円超〜5万6,000円以下 | 保険料✕1/4+1万4,000円 |
5万6,000円超〜 | 一律2万8,000円 |
3種類の合計控除額 (上限額) |
7万円 |
そして旧制度の控除額は、次の表のようになります。
旧制度の所得税の個人年金保険料控除の計算方法
年間保険料 | 個人年金保険料控除の金額 |
2万5,000円以下 | 保険料全額 |
2万5,000円超〜5万円以下 | 保険料✕1/2+1万2,500円 |
5万円超〜10万円以下 | 保険料✕1/4+2万5,000円 |
10万円超〜 | 一律5万円 |
3種類の合計控除額 (上限額) |
10万円 |
旧制度の住民税の個人年金保険料控除の計算方法
年間保険料 | 個人年金保険料控除の金額 |
1万5,000円以下 | 保険料全額 |
1万5,000円超〜4万円以下 | 保険料✕1/2+7,500円 |
4万円超〜7万円以下 | 保険料✕1/4+1万7,500円 |
7万円超〜 | 一律3万5,000円 |
3種類の合計控除額 (上限額) |
7万円 |
それぞれの控除額や計算式を覚える必要はありません。ただこちらの表をいつでも確認できるようにしておくと、すぐに計算できて便利ですよ。
個人年金保険料控除でいくら戻る?【シミュレーション】
シミュレーションの条件※
- 加入保険商品:個人年金保険(確定年金)
- 契約者・被保険者・年金受取人:A氏(30歳・男性・年収450万円・所得税率20%・住民税率10%)
- 年金受取期間:10年
- 保険料払込期間:30年(60歳満了)
- 年金受給開始時期:60歳
- 年金額:60万円(月5万円・合計600万円)
- 月額保険料:1.5万円
※新制度:平成24年以後の契約
以上の場合の、A氏の控除額は、次のように計算できます。
A氏の個人年金保険料控除額
- 年間保険料:1.5万円×12ヶ月=18万円
- 個人年金保険料控除額・所得税:4万円
- 個人年金保険料控除額・住民税:2万8,000円
- 税金の控除額・所得税:4万円×0.2=8,000円
- 税金の控除額・住民税:2万8,000円×0.1=2,800円
- 税金の控除額合計:10,800円
- 年間保険料に対する割合:6%
- 保険料払込期間の税金控除額:32万4,000円
編集部
個人年金保険料控除に関するよくある質問
個人年金保険料控除を受けると、所得税や住民税の負担が軽くなり、将来の老後に備えられます。
所得税や住民税は、個々の所得に応じて計算される税金です。個人年金保険料控除を利用すると、課税対象となる所得(課税所得)が減ります。その結果、所得税や住民税の支払い額が減少し、負担が軽くなるのです。
まとめ
本記事では、個人年金保険料控除の適用条件や計算方法、上限など基本的な情報をまとめてご紹介しました。
個人年金保険料控除とは、加入している個人年金保険(一定の条件あり)に支払った年間の保険料を、その年の所得から差し引くことで所得税・住民税の節税効果を得られる制度のことでした。
個人年金保険料控除を活用すれば、他の控除枠とも組み合わせて、長期間で見れば大きな節税効果が期待できます。ただし、控除を利用するには一定の条件を満たすことが必要です。
ここを理解していないと、個人年金保険料控除の枠を全く活用できず、節税効果が落ちてしまいます。
編集部
人材派遣会社17年経営したのち、保険代理店に転身後16年従事、2級FP技能士・トータルライフコンサルタント・MDRT成績資格会員2度取得。 ファイナンシャルプランナーとしてライフプランニングや家計診断を通して老後資金の対策、節約術などを提案。 また自らのがん闘病経験をふまえた生きる応援・備えるべき保障の大切さをお伝えしています。
生命保険の業界歴10年。年間500世帯の相談実績。 社会保険・税金の効率化、家計・固定費の見直し、保険の新規加入・見直し、住宅購入・住宅ローン、資産形成・老後の年金対策・少額投資(iDeCo・NISAなど)、不動産投資と幅広い分野に精通。