これから子どもにかかる教育費用をどのように準備しようか悩まれる親御さんは多いのではないでしょうか?教育費用を準備する方法として、よく挙げられるのが「学資保険」です。
しかし、学資保険にも他の生命保険と同様にメリットとデメリットが存在します。ご自身に本当に必要な保険か否かを判断するには、双方をきちんと正しく理解することが重要です。
この記事では、学資保険のメリット・デメリットを徹底解説。併せて、加入時の注意点や学資保険と貯金どちらがおすすめかについても詳しく解説します。
この記事の要点
- 学資保険には、「教育資金を着実に準備できる」「万が一の際の保障が得られる」「生命保険料控除で節税できる」といったメリットがあります。
- ただし、「途中解約時の元本割れリスク」や「インフレに弱い」といったデメリットもあるので注意が必要です。
- 学資保険や子どもの教育資金に関する悩みは、保険相談窓口で専門家に相談するのがおすすめです。
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学資保険のメリット4選
学資保険は、教育資金を準備するための貯蓄機能を持った生命保険です。
主な目的は「教育資金準備」であり、一般的には17歳・18歳・20歳・22歳など子どもの進学時期に合わせて満期を設定します。
1. 確実に教育費を貯められる
学資保険は保険料が自動的に口座から引き落としされるため、半強制的にお金を貯めることが可能です。
普通預金だけで教育資金を準備しようとすると、貯金を続けるのが難しかったり、貯めたお金を他の用途に使ってしまったりすることがあるかもしれません。
編集部
貯金が苦手な人、手元にお金があると使ってしまいがちな人には学資保険はおすすめです。
2. 普通預金よりも高利率が期待できる
学資保険は、普通預金よりも高い利率を期待できる場合があります。
例えば、普通預金の金利が0.001%程度であるのに対し、学資保険は返戻率が100%を超えるものもあり、途中で解約せずに満期まで続ければ、支払った保険料を上回る金額を受け取れます。
編集部
返戻率が高い商品は、得られる保障を最小限にしていることが多く、本来の保険としての意味合いが薄くなる場合があります。 万が一の際の保障と返戻率のバランスをよく考えて選ぶことが重要です。
3. 生命保険料控除で節税できる
学資保険に支払う保険料は生命保険料控除の対象であり、所得税額を少なくすることができます。
ポイント
保険金を受け取る際も、受け取り方によっては税金がかかりにくくすることも可能です。
一方の貯金では税制優遇は特にありません。 預金に利息が付くときは20.315%が源泉徴収されたあとの金額になることもあり、税引き後の手取り額は表面的な利回りよりさらに安くなります。
4. 万が一の際の保障が得られる
学資保険では契約者が死亡あるいは高度障害状態になった際に、その後の保険の支払いが免除されます。
また、満期時に予定通りの保険金を受け取る特約を付帯できます。
注意点
- 一方の貯金では、大黒柱が働けなくなった場合の保障がありません。
- その日の生活に手いっぱいになってしまい、貯金がストップしてしまうこともあるかもしれません。
- こうなると、将来の教育費の準備どころではありません。
いざとなったときに子どもに確実にお金を遺せるのか、ここが「預金だけで良いのか」「学資保険に加入すべきか」の見極めどころです。
学資保険のデメリット3選
それでは、逆に学資保険に加入することによるデメリットについて見ていきましょう。
学資保険のデメリット
1. 途中解約すると元本割れのリスクがある
学資保険では、途中解約すると解約返戻金を受け取ることができますが、支払った保険料を下回った状態(元本割れ)になる可能性がある点に注意が必要です。
注意点
- 特に、契約してから数年という短期間での解約など、契約年数が短いほど元本割れの可能性が高まります。
- 学資保険の恩恵を最大限に受けるためには、満期まで解約せずに続けることが大切です。
編集部
満期時でも元本割れするケースも
学資保険は大きく分けて「貯蓄性重視」の学資保険と「保障重視」の学資保険に分けられます。
注意点
- 子どもが入院したときなどの医療保障を重視する場合、保障のために多くの保険料を払うことになります。
- 満期時でも返戻率が100%を下回ることも珍しくありません。
編集部
2. インフレに弱い
日本政府と日本銀行が、毎年2%のインフレを目指しているのをご存知でしょうか?
編集部
- 2019年:0.47
- 2020年:▲0.03
- 2021年:▲0.23
- 2022年:2.50
- 2023年:3.21
出典:IMF World Economic Outlook Databases|平均消費者物価の変化率
インフレが10%進むと、100円で買えていた商品が110円出さないと買えなくなります。
学資保険は、契約時の利率が固定された状態で満期を迎える保険です。 今後インフレが進行して物価が上がる場合、相対的に将来受け取ることができるお金が目減りする可能性があります。
編集部
3. 保険会社が倒産したときのリスク
銀行が破綻した場合、銀行預金は「預金保険制度」によって元金1,000万円までとその利息は全額保護されます。
注意点
- 学資保険も、生命保険契約者保護機構で一定の保護を受けられますが、全額の保護は受けられません。
- 保護されるのは「責任準備金の90%」と決まっているためです。
- 保険会社の状況次第では、10%の責任準備金が失われることになります。
編集部
学資保険と貯金、どちらがおすすめ?
それでは、学資保険の方が向いている人と銀行等で貯金をする方が向いている人は具体的にどのような人なのでしょうか。
自分がどちらの項目によく当てはまるのか確認し、検討してみましょう。
学資保険が向いている人
貯金が苦手な人
学資保険は、保険料が口座から自動的に引き落されるため、手間をかけずにお金を貯めることができます。
貯金の場合は給与から生活費を振り分けて自分で入金する手間が発生するほか、何か急な出費があった際はどうしても頼りにしてしまいがち。
しかし、学資保険なら保険料を半強制的に貯められるので、貯金が苦手な人でも確実にお金を貯めることが可能です。
万が一の保障を得ながら教育資金を準備したい人
学資保険は、万が一の保障を得ながら教育資金を準備したい人にもおすすめです。
学資保険では、契約者(親)が万が一の不慮の事故や疾患によって亡くなった場合に死亡保険金が支払われます。
そのため、家族や子どもの将来に影響を及ぼすリスクを最小限に抑えるためにも非常に役立つ保険と言えます。
安定的な資産形成を目指したい人
学資保険は、安定的な資産形成を目指す人にも向いています。
学資保険は、投資の要素も含んでおり、保険会社は保険料を運用して将来の支払いを確保し、利益を生み出します。学資保険の投資部分は比較的安定しており、一般的な投資商品(株式や債券など)に比べてリスクが低いことが特徴です。
そのため、将来の学費を賄うために、資産を守りながら賢く教育資金を積み立てたい人に、学資保険は非常におすすめです。
貯金が向いている人
すでに教育資金の目途が立っている人
子どもの教育費を貯金だけで十分に賄える人は、学資保険に加入する必要性は低いといえます。
編集部
貯蓄目的に使わないのであれば無理に加入する必要はなく、貯金と掛け捨ての生命保険でも十分に備えることができるでしょう。
途中で解約してしまいそうな人
途中で解約してしまいそうな人は、学資保険の加入を慎重に考える必要があります。
そのため、収入が不安定で途中解約の可能性がある場合は、学資保険への加入を避けるべきです。
編集部
学資保険に加入する際の注意点
最後に、学資保険に加入する際の注意点をご紹介します。契約後に後悔してしまわないためにも、必ずチェックしておきましょう。
学資保険に加入する際の注意点
満期の時期は適切か
学資保険は、その商品や種類によって満期の設定はさまざまです。
ポイント
- 中学・高校・大学入学時に「祝い金」「満期保険金」が分割で支払われるもの
- 大学進学時にまとめて支払われるもの など
編集部
18歳での受け取りが一般的ですが、高校3年生の春のうちに進学が決まるといったケースの場合は入学金や授業料の振込みが他の学生よりも早くなることがあります。 18歳よりも早めに、17歳あたりで受け取り時期を設定することも考えなければいけません。
満期前の解約は満期保険金を受け取るよりも損になるため、将来の進学希望を考慮して慎重に受け取り時期を決める必要があります。
特約は必要か
学資保険ではさまざまな特約を付帯することができます。 以下は特約の一例です。
学資保険の特約(一例)
- 払込免除特約
- 育英年金特約
- 医療保険特約
- 傷害特約
- 災害特約
代表的な特約に払込免除特約があります。
編集部
そのほか、「育英年金特約」を付帯すれば親が死亡あるいは高度障害状態になった際に年金形式で毎年お金を受け取ることが可能です。 これらプラスアルファの特約を付帯するごとに万が一の保障は充実します。
注意点
- 反面、将来の貯蓄性を損なうことになる可能性があります。
- あまりに特約を付帯しすぎると、満期の返戻率が100%を下回ることに注意が必要です。
教育費全額は貯められない
教育費用は、学資保険で全て貯められるわけではありません。 学資保険では200~300万円を18~20歳になったときに一括で受け取ったり、18歳から20歳まで毎年50万円ずつ受け取るケースが一般的です。
編集部
令和3年度「教育費負担の実態調査結果」によれば、大学入学費用と1年間の学費は以下の通りです。
表は横にスライドできます
私立短大 | 国公立大学 | 私立大学文系 | 私立大学理系 | |
入学費用 | 73万円 | 67.2万円 | 81.8万円 | 88.8万円 |
1年間の学費 | 137万円 | 103.5万円 | 152万円 | 183.2万円 |
参考:日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」
国公立大学に進んだとしても初年度だけで約178万円、もっともお金がかかる私立の理系を選択した場合は初年度で約269万円のお金がかかります。
編集部
インフレに備える投資商品も効果的に組み合わせる
ジュニアNISA
運用する人は原則として親権者で、非課税投資枠80万円までの投資で得られる売却益や配当金が最大で5年間は非課税になります。
編集部
また、つみたてNISAと違って投資信託以外にも個別株式などの投資商品が対象になります。
注意点
- ただし、口座開設者(子ども)が18歳になるまで払い出しできないデメリットがあります。
- 18歳になる前に払い出しすると過去の利益に対して課税されるため、ジュニアNISAを始める意味がありません。
- また、幅広い投資商品が選べるために運用する親権者が投資の基礎的な知識を持っている必要があります。
つみたてNISA
対象になるのは1月1日時点で18歳以上の日本在住の人で、買い付け方法が名前の通り「積み立て投資」に限定されています。
ポイント
- 本来なら税金を支払う投資での売却益や配当金が1,800万円まで無期限で非課税になるのが特徴です。
- 毎年120万円分(成長投資枠は240万円)の投資枠まで利用可能です。
- 購入できる投資商品は「投資信託」と呼ばれる株の詰め合わせパックに限定されており、証券会社次第では100円から購入できます。
- 万が一大きな出費が必要な場合は自由に売却も可能です。
非課税のメリットを生かし、効率的に投資で利益を狙うことができるでしょう。 対象商品は「販売手数料がゼロ」「信託報酬(毎年かかる手数料)一定水準以内」など国の基準を満たした「長期投資に向く投資信託」に限定されています。
まとめ
今回は、学資保険のメリット・デメリットについて徹底解説しました。
学資保険は子どもの大学進学費用を貯めるのに適した保険ですが、これだけで全ての費用を賄えるわけではありません。 特に保障機能を優先した場合は返戻率が100%を下回ることがあり、貯蓄効率は預貯金よりも悪くなることがあります。
万が一の際の保障のために加入したとしても、他の金融商品を組み合わせて効率的にお金を増やすことを考える必要があるでしょう。
学資保険で両親の万が一に備えながら着実にお金を貯めつつ、余剰資金で「ジュニアNISA」や「つみたてNISA」等を利用して将来の支出に備えましょう。
編集部
人材派遣会社17年経営したのち、保険代理店に転身後16年従事、2級FP技能士・トータルライフコンサルタント・MDRT成績資格会員2度取得。
ファイナンシャルプランナーとしてライフプランニングや家計診断を通して老後資金の対策、節約術などを提案。
また自らのがん闘病経験をふまえた生きる応援・備えるべき保障の大切さをお伝えしています。
専業主婦を経て、子供が4歳のときにファイナンシャルプランナー(FP)に転身。生命保険会社や大手保険代理店での勤務期間中には、数多くの店舗の立ち上げにも携わる。 約18年間で法人・個人5,000件以上のコンサルティングを担当。
自身の人生経験からもお金の大切さを痛感し、新聞社主催のマネーセミナーや女性のためのマネーセミナー、キッズセミナーなどの講師として活躍中。