60代に入ると、多くの人が定年退職後、老後の生活を迎えることになります。この時期には子どもたちも独立し、教育費の必要がなくなるため、生命保険に加入する必要性を感じない方もいるかもしれません。
しかし、実際には身体の衰えから健康に不安を感じる方も増えており、60代は約9割以上の方が医療保険に加入しています※。
本記事では60代の医療保険の必要性をはじめ、最適な選び方や注意点まで詳しく解説します。
編集部
この記事の要点
- 病気やケガのリスクが高まる60代にとって、医療保険の必要性は高いといえます。
- 特に子どもや配偶者など扶養家族がいる人や、将来の健康状態に不安のある人は早いうちに加入しておくべきです。
- 60代の保険選びで重要なのは、保障の充実度と保険料のバランス。自分に合った保険に加入するためには、専門家に相談してみることをおすすめします。
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目次
60代に医療保険はおすすめ?必要性を解説
編集部
何よりの理由は特に60代後半にもなると、病気・ケガによって医療費がかさむリスクが高まるからです。
知っておきたい医療保険の基本情報
60代が抱える病気と医療費のリスク
60代になると、病気やケガのリスクが高まり、医療費が増加する傾向にあります。以下のデータから、60代の入院率や病気のリスクがどれほど高くなるかを見ていきましょう。
40〜60代の入院率(人口10万対) | |||
年齢 | 総数 | 男性 | 女性 |
40〜44歳 | 277 | 278 | 267 |
45〜49歳 | 345 | 387 | 302 |
50〜54歳 | 478 | 551 | 404 |
55〜59歳 | 664 | 776 | 551 |
60〜64歳 | 895 | 1,064 | 730 |
64〜69歳 | 1,207 | 1,444 | 983 |
(参考:厚生労働省令和2年度(2020)「患者調査」)をもとに作成
このデータからわかるように、特に60代後半になると入院率が急激に上がります。入院するリスクが高くなると、その分医療費もかさむことが予想されます。
また、60代はがんや心臓病、脳卒中などの重篤な病気の罹患率も高くなり、医療費の負担がさらに増える恐れも。特にがんの場合、長期にわたる入院や高額な治療が必要になることが多いため、医療費が一気に高額になるリスクがあります。
編集部
民間の医療保険の役割
編集部
例えば公的医療保険制度ではまかないきれなくても、医療保険で対応できる医療費には次のようなものがあります。
公的医療保険ではなく医療保険でまかなえるもの
- 先進医療費(特約を付加した場合)
- 通院の交通費
- 入院中の食事代
- 入院中の差額ベッド代
- 入院中の日用品代や雑費
- 家族のお見舞いの交通費・宿泊費
具体的に、医療保険で受け取れる保険金は、主に入院給付金・手術給付金の2種類です。
入院給付金
入院給付金の計算式
- 入院日額×入院日数=入院給付金額
入院日額は、医療保険の加入時にあらかじめ決められており、5,000円や1万円、1万5,000円、2万円といったように5,000円単位で決めるのが一般的です。※保険会社によって設定できる入院日額の単位は様々です。パンフレット等でご確認ください。
そのとき受け取れる入院給付金は、2万円×15日=30万円となりますね。
これまでの入院給付金の中には、1日などのごく短期間の入院に対しては保障されないという保険商品もありました。
編集部
手術給付金
※治療を直接の目的とする手術の他、骨髄移植、放射線治療等、保険会社が約款に定める所定の支払事由に該当する者に限ります。通常、先進医療は含まれません。
1度の手術で受け取れる手術給付金は、次の計算式で求められます。
手術給付金の計算式
手術給付金倍率×入院日額=手術給付金額
手術給付金倍率は20倍や30倍などの10単位で決められるのが一般的です。
具体例として、入院日額が2万円で、手術給付金倍率が20倍として手術を受けたとしましょう。
そのとき受け取れる手術給付金は、2万円×20倍=40万円となります。
編集部
医療保険の種類と特約
基本的に、ここまで解説した保障を受けられる医療保険には、いろいろな種類があり、また多くの特約を付加できます。
それぞれをまとめると、次のようになります。
医療保険の種類と付加できる特約
- 定期医療保険:一定期間に限り保障される
- 終身医療保険:一生涯にわたり保障される
- 女性向け医療保険:女性特有の病気・ケガをしたときに、より手厚い保障が受けられる
- 先進医療特約:重粒子線治療などの先進医療にかかる技術料のうち、自己負担額と同額を保障してくれる
- がん特約:がんになったときに一時金を受け取れる
- 三大疾病(特定疾病)特約:「がん・心筋梗塞・脳卒中」などで所定の状態になったとき一時金を受け取れる
- 通院特約:入院後の通院費を保障してくれる
- 女性向け特約:乳がんや子宮頸がんなどの女性特有の病気になったときに、通常の給付に上乗して保障される
また医療保険と似た性質をもち、病気・ケガなどによる経済的ダメージを補填してくれる保険には、次のようなものがあります。
医療保険に類似した保険
- がん保険:保険会社所定のがんに罹患したときに、給付金により保障する
- 特定疾病(三大疾病)保険:がんや脳卒中、急性心筋梗塞で保険会社所定の状態になったときに、保険金を受け取れる
- 就業不能保険:病気・ケガが原因で保険会社所定の就業不能状態となり、収入が減少したときに保険金を受け取れる
- 傷害保険:ケガによる死亡・後遺障害・手術・入院・通院など保険会社所定の支払事由に該当したときに保険金が支払われる損害保険
- 介護保険:保険会社の定める一定の要介護等級に認定されたときに、保険金が支払われます
- 認知症保険:一定の認知症と診断されたときに、保険金を受け取れる
※ここにあげる保険はその概略のみを記載しています。各保険には支払事由や免責等の制限などが規定されており、上の事由に該当したとしても保険金が支払われない場合があります。必ず各保険会社の商品パンフレット等で詳細をご確認ください。
編集部
60代の医療保険の加入率
では、60代の医療保険への加入率を確認していきます。
世帯主年齢別の医療保険・医療特約への世帯加入率 | |
年齢 | 加入率 |
60〜64歳 | 91.3% |
65〜69歳 | 87.4% |
(出典:生命保険文化センター令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」)をもとに作成
上図を見てわかるように、60代でもおよそ9割の人が医療保険に加入していることがわかります。
編集部
60代で医療保険が必要な人・不要な人
ここでは、60代で医療保険が必要な人と不要な人について具体的に紹介していきます。
同じ60代でも、医療保険の必要性は人によって異なりますので、ご自身の状況に合わせて判断する際の参考にしてください。
60代で医療保険が必要な人
原則的に、医療費がかさむリスクの高い60代の人は、医療保険への加入をおすすめします。
ただそのなかでも特に、医療保険が必要な人の特徴をまとめると、次のようになります。
60代で医療保険が必要な人の特徴
- 子どもや配偶者など扶養家族がいる人
- 突然の医療費負担に不安のある人
- 将来の健康状態に不安のある人
子どもや配偶者など扶養家族がいる人
60代でも、まだ子どもや配偶者を養っている人もいるでしょう。
そのような人が、病気・ケガになって働けなくなったり、医療費がかさんだりすると、家計への影響が計り知れません。
編集部
そのため、特に扶養家族のいる人は、医療保険への加入をおすすめします。
突然の医療費負担に不安のある人
病気・ケガは、突然起こるものです。特に、60代では健康リスクが高まることもあり、医療保険料も増える傾向にあります。
そのため、十分な資産がなく、急な医療費の出費に不安のある60代の人は、医療保険に加入することをおすすめします。
編集部
将来の健康状態に不安のある人
将来の健康状態に不安のある60代の人も、医療保険への加入がおすすめです。なぜなら、資金不足で必要な医療を受けられないリスクがあるからです。
医療保険により、医療費を抑えられれば、最低限の治療を受けられる可能性が高まります。
60代で医療保険が不要な人
一方で、次のような人は60代でも慌てて医療保険に加入する必要性は低いです。
60代で医療保険が不要な人
- 医療費をまかなえるだけの十分な資産がある人
- 医療保険に新たに加入する場合に、高額な保険料がかかる人
医療費をまかなえるだけの十分な資産がある人
医療費をまかなえるだけの十分な資産がある人は、医療保険に加入する必要性は低いです。年齢が上がると病気やケガのリスクが高まるため、医療保険料も高くなる傾向があります。
そのため、ある程度資産に余裕のある方は、医療保険に加入するよりも、保険料を資産運用に回したり、日常生活を充実させるのに活用する方が良いでしょう。
医療保険に新たに加入する場合に、高額な保険料がかかる人
繰り返しになりますが、60代の医療保険料は高額になりやすいです。
そのため、あまりにも保険料が高く、現在の家計状況とバランスが合わないなら、無理して加入する必要はありません。
編集部
60代の医療保険の選び方・見直し方
ここからは、60代の医療保険の選び方について詳しく解説していきます。現在加入している医療保険の見直しを考えている方も、ぜひ次のポイントを確認してみてください。
60代が医療保険を選ぶ際のポイント
- そもそも加入できるのか
- 保障が充実しているか
- 保険料が適切か
- 貯蓄型か掛け捨て型か
- 付加できる特約は十分か
60代の場合、年齢が影響して新たに医療保険に加入できなかったり、これまでよりも保険料がグッと高くなってしまう可能性があります。
そのため、まずは加入条件をしっかり確認し、そのあと保障の充実度と保険料のバランスを検討しましょう。
保障を充実させれば当然、保険料は高くなります。また貯蓄型にすれば、将来の資金を蓄えられますが、こちらも保険料が高くなります。
編集部
60代が医療保険に加入・見直しをする際に注意すべき点
60代で医療保険に加入する際には、次のような点に注意が必要です。
新規加入すると保険料が高くなる可能性が高い
60代での医療保険加入の場合、若年層に比べて保険料が高く設定されることが一般的です。年齢が上がることでリスクが増し、保険会社はそのリスクを保険料に反映させます。
例えば、60歳を過ぎると、保険料は一気に増加し、加入時に高額な保険料を支払うことが予想されます。そのため、医療保険を見直す場合は、予算に合ったプランを選ぶことが重要です。
保険を解約しても満足のいく解約返戻金が返還されないことがある
長年加入していた保険を解約する場合、解約返戻金が支払われますが、60代で解約した場合、若い頃に比べて返戻金が少ないことがあります。
特に積立型の医療保険や終身保険では、解約時に返戻金が低くなる可能性があるため、解約を検討する際にはその点を十分に理解しておく必要があります。
編集部
健康状態によっては保険に加入できない恐れがある
60代での新規加入を考える際、特に注意が必要なのが健康状態です。過去に病歴がある、現在何らかの治療を受けている場合、加入を断られる恐れがあります。
ただそのような人には、「引受基準緩和型医療保険」や「無選択型医療保険」など、加入条件が緩和された医療保険があるので、そちらも検討してみてください。
編集部
ただし、通常の医療保険よりも保険料が高くなる傾向があるため、費用対効果をよく考えて選ぶことが重要です。
【番外編】医療費・保険料の還付金詐欺にご注意ください
最近、全国で60代をターゲットに「保険料の還付金があるので、ATMで受け取り手続きをしてほしい」といった電話がかかってきて、お金を騙しとる詐欺が増えています。
- この手口は、電話で市役所や税務署、社会保険事務所などの職員を名乗り、医療費や税金の還付金があると言って、スーパーやコンビニなどのATMに誘導しますが、還付金がATMで支払われることは絶対にありません。
- 「お金が返ってくるので、携帯電話を持ってATMに行くように」と言われたら、還付金詐欺です。
電話をかけながら、ATMを操作させてお金を戻すことを勧める企業や役所は絶対にありません。
このような電話があったら、相手の説明を疑い、すぐに家族や警察等にご相談ください。
編集部
60代の医療保険に関するよくある質問
60代こそ医療保険の必要性は高いと言えます。60代は加齢に伴い健康リスクが増加し、医療費の支出が増える可能性があるからです。また、60代になると公的医療制度だけではまかなえない部分も増えるため、民間の医療保険が重要になります。
60代からでも比較的安い保険料で加入できる医療保険は存在します。ただし、保険料は加入者の年齢や健康状態、保険内容によって異なります。健康状態が良好で、保険金額を抑えたり特約を絞ったりすれば、費用を抑えられるでしょう。
一般的に保険契約が60代の誕生日を迎えたときに終了する時点を指します。この時点で保険契約が満了となり、保険金の受け取りが終了します。保険料の支払いも終了するため、保険契約の内容に応じて、これ以降の医療費や入院費用のカバーは保険からは受けられなくなります。60代満期後は、必要に応じて新たな医療保険を検討することが重要です。
生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2022年度)によると、60代の年間払込保険料は男性が21.2万円(月17,600円)、女性が15.9万円(月13,250円)です。子どもが独立し退職後の人が多いこともあり、全体的に保険での保障を低めに設定している人が多いのでしょう。
まとめ
今回は60代の医療保険の必要性をはじめ、最適な選び方や注意点、今人気の医療保険ランキングなどをまとめてご紹介しました。
60代はあらゆる病気にかかるリスクが、男性・女性ともに一気に高まります。病気やケガで医療費がかさむリスクが高く、それには医療保険で備えるのが有効です。
特に、扶養家族がいる方や、十分な貯蓄を用意できていない方、将来の健康状態に不安がある方は早めに加入しておくことをおすすめします。
ただし、60代から新規で医療保険に加入する際は注意も必要です。保険料が高くなったり、健康状態によっては加入を断られてしまったりする可能性があるため慎重に行いましょう。
編集部
大学卒業後、信用金庫に入社。中立的な立場でお客様目線の営業をしたいという思いから、保険代理店として独立を決意。
保険会社の代理店営業職、保険会社の研修生を経て2020年9月に保険代理店『コミヤ保険サービス』を設立。
保険代理店の実務経験を生かして、執筆業や講師業も行う。
人材派遣会社17年経営したのち、保険代理店に転身後16年従事、2級FP技能士・トータルライフコンサルタント・MDRT成績資格会員2度取得。
ファイナンシャルプランナーとしてライフプランニングや家計診断を通して老後資金の対策、節約術などを提案。
また自らのがん闘病経験をふまえた生きる応援・備えるべき保障の大切さをお伝えしています。
岩手県出身。大学卒業後、銀行、外資系生命保険会社、建設業(企業再生)を経て、ほけんのぜんぶに入社。
保険業界経験歴は18年。岩手県生命保険協会副会長も務める。