日本人の平均寿命が延びて、人生100年時代といわれるようになりました。そこで気になるのが老後資金です。
「老後資金は平均いくらあれば安心なのだろう」「公的年金は何歳でいくらもらえるのだろう」など、さまざまな疑問や不安を抱えている人は多くいらっしゃるでしょう。
そこで今回の記事では、老後の生活資金の必要額を夫婦・独身のケース別に具体的な数字を用いながら詳しく解説します。
この記事の要点
- 総務省統計局の「2023年家計調査」のデータに基づく試算によれば、モデルケースにおける必要な老後資金は1,365万円です。
- 老後資金の正確な必要額を特定することは難しいですが、想定できる範囲内で老後の収支を予測し、シミュレーションを行うことで、おおまかな目安を得ることができます。
- 老後資金の準備は早期に始めることが重要です。老後資金の不安がある方は、保険とお金のプロ(FP)に相談してみましょう。
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老後資金は結局いくら必要なの?
老後資金は結局でいくら必要なのでしょうか?総務省の家計調査の資料をもとに、具体的な金額を調査してみました。
「老後資金は2,000万円必要」の根拠
2019年6月に金融庁の金融審議会・市場ワーキング・グループの報告書をきっかけに、老後2,000万円問題が話題となりました。
老後資金の2,000万円という数字はどうやって算出されたのでしょうか。
編集部
老後資金の必要額の算出手順
- 手順①老後の毎月の家計収支を計算
- 手順②老後の生活期間を計算
- 手順③毎月の家計収支と老後の生活期間から必要な老後資金を計算
手順①老後の毎月の家計収支を計算
最初に行うのが、老後の毎月の家計収支を調べることです。総務省統計局の「2017年家計調査」によると、高齢夫婦無職世帯の家計収支は次の通りです。
高齢夫婦無職世帯の家計収支
- 老後の毎月の収入: 20万9,198円
- 老後の毎月の支出: 26万3,717円
- 毎月の赤字額:5万4,519円(収入-支出)
毎月の収入から支出を引くと5万4,519円のマイナス、つまり赤字となります。
手順②老後の生活期間を計算
次に、老後の生活期間を計算します。老後生活のスタート時期を65歳として、平均寿命までの期間を算出します。
老後の生活期間
- 男性の平均寿命:81.05歳 → 老後期間 約16年(192か月)
- 女性の平均寿命:87.09歳 → 老後期間 約22年(265か月)
これだけを見ると、男性は約16年、女性は約22年の生活資金が必要と考えられます。
しかし、老後の生活が長引くリスクを考慮し、金融審議会の試算では老後生活が30年間(360か月)続く、つまり夫婦が95歳まで生きると仮定して計算されています。
※老後の生活期間の計算式
男性の老後の生活期間:(81.05歳-65歳)×12か月=約192月
女性の老後の生活期間:(87.09歳-65歳)×12か月=約265月
手順③毎月の家計収支と老後の生活期間から必要な老後資金を計算
手順①②が終わったら、「毎月の家計収支」と「老後の生活期間」から必要な老後資金を計算します。
必要な老後資金
- 毎月の家計収支:▲5万4,519円
- 老後の生活期間:30年=360か月
- 必要な老後資金:5万4,519円×360か月=約1,963万円
「2023年家計調査」を基に試算すると老後の必要資金は1,365万円
前述の金融審議会の試算は、「2017年家計調査」の資料を計算基礎として算出したものです。
「2023年家計調査」では、高齢夫婦無職世帯の家計収支は次の通りです。
ポイント
- 老後の毎月の収入: 24万4,580円
- 老後の毎月の支出: 28万2,497円
- 老後の毎月の赤字額:23万6,576円-25万5,100円=▲3万7,917円
引用:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)令和5年(2023年)」P.18
「2017年家計調査」と「2023年家計調査」を比較すると、老後の毎月の赤字額は5万4,519円から3万7,917円に大きく減少しています。
3万7,917円の赤字が30年間(360か月)続くと仮定すると、必要な老後資金は次の通りです。
ポイント
- 毎月の家計収支:▲3万7,917円
- 老後の生活期間:30年=360か月
- 必要な老後資金:万7,917円×360か月=約1,365万円
試算の前提条件となる家計収支の赤字額が変わったため、必要な老後資金は2,000万円から1,365万円に減少しました。
編集部
老後資金の必要額【夫婦・独身別】
老後資金が具体的にいくら必要かを知るには、具体的に「何に・いくらかかるのか」を把握しておくことが大切です。
前述の「2023年家計調査」から夫婦・独身別に費用項目をみていきましょう。
【夫婦2人の場合】老後に必要な1ヶ月の生活費は28万2,497円
表は横にスライドできます
高齢夫婦無職世帯の費用項目 | |||
費用項目 | 毎月の平均支出額 | 消費支出に占める割合 | |
消費支出: 25万959円 |
食料 | 7万2,930円 | 29.1% |
住居 | 1万6,827円 | 6.7% | |
光熱・水道 | 2万2,422円 | 8.9% | |
家具・家事用品 | 1万477円 | 4.2% | |
被服及び履物 | 5,159円 | 2.1% | |
保健医療 | 1万6,879円 | 6.7% | |
交通・通信 |
3万729円 | 12.2% | |
教育 | 5円 | 0.0% | |
教養・娯楽 | 2万4,690円 | 9.8% | |
その他消費支出(※) | 5万839円 | 30% | |
非消費支出: 3万1,538円 |
直接税 | 1万3,090円 |
― |
社会保険料 | 1万8,435円 | ― | |
合計 | 28万2,497円 | ― |
※その他消費支出は、諸雑費や交際費、仕送り金など。
食料が消費支出の3割近くを占めるのは理解しやすいですが、諸雑費や交際費などの「その他消費支出」が約5万円と意外に大きな金額になっています。
編集部
【独身の場合】老後に必要な1ヶ月の生活費は15万7,673円
表は横にスライドできます
高齢単身無職世帯の費用項目 | |||
費用項目 | 毎月の平均支出額 | 消費支出に占める割合 | |
消費支出: 14万5,430円 |
食料 | 4万103円 | 27.6% |
住居 | 1万2,564円 | 8.6% | |
光熱・水道 | 1万4,436円 | 9.9% | |
家具・家事用品 | 5,923円 | 4.1% | |
被服及び履物 | 3,241円 | 2.2% | |
保健医療 | 7,981円 | 5.5% | |
交通・通信 |
1万5,086円 | 10.4% | |
教育 | 0円 | 0.0% | |
教養・娯楽 | 1万5,277円 | 10.5% | |
その他消費支出(※) | 3万821円 | 21.2% | |
非消費支出: 1万2,243円 |
直接税 | 6,437円 | ― |
社会保険料 | 5,799円 | ― | |
合計 | 15万7,673円 | ― |
高齢単身無職世帯の各費用項目の割合は、住居の割合が高いこと以外、高齢夫婦無職世帯とほぼ同じです。
編集部
老後資金がいくら必要になるかシミュレーションしてみよう
2019年の金融庁の報告書では老後資金は2,000万円必要だと言われていますが、自分の老後資金がいくら必要かは個人ごとに計算が必要です。
編集部
例えば、生命保険文化センターの生活保障に関する調査の結果は次の通りです。
ポイント
- 老後の最低日常生活費:月額平均23.2万円
- ゆとりある老後生活費:月額平均37.9万円
参考:生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」
老後生活費を月23.2万円と想定するか、月37.9万円と想定するかで、老後の必要資金は約5,000万円近く変わってきます。
ポイント
(37.9万円-23.2万円)×360か月=5,292万円
老後資金のシミュレーション方法
老後資金の計算方法は、次の通りです。
必要な老後資金=(老後の毎月の生活費-老後の毎月の収入)×老後の生活期間
つまり、必要な老後資金をシミュレーションするのに必要なのは、次の3つの金額や期間です。
ポイント
- 老後の毎月の生活費
- 老後の毎月の収入
- 老後の生活期間
編集部
「老後の毎月の生活費」の想定
最初に、老後の生活費(支出)をいくらにするか決めます。下記を参考にして、自分の老後の生活費を想定しましょう。
ポイント
- 総務省統計局「2023年家計調査」:高齢夫婦無職世帯の支出額は月平均28万2,497円、高齢単身無職世帯は15万7,673円。
前述の費用項目の平均支出額も参考になります。 - 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」:老後の最低日常生活費は月額平均23.2万円、ゆとりある老後生活費は月額平均37.9万円。
編集部
また、毎月の生活費のほかに想定される高額な臨時費用があれば、老後資金に上乗せが必要です。
ポイント
- 住宅の改修費
- 車の買い替え
- 海外旅行
- 子どもの結婚費用 など
「老後の毎月の収入」の想定
次に、老後の収入について確認しましょう。一般的には、老後の主な収入は公的年金です。
注意点
自営業者と会社員では、公的年金額に大きな違いがあるので確認が必要です。
厚生労働省年金局の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度の平均受給額は次の通りです。
ポイント
- 老齢厚生年金の受給額(会社員など):月額14万5,665円
- 老齢基礎年金の受給額(自営業者など):月額5万6,479円
※老齢厚生年金の受給額は老齢基礎年金の受給額を含む。老齢基礎年金の受給額は会社員を含む平均額。
参考:厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
自営業者など国民年金の加入しかない人の公的年金は、老齢基礎年金だけです。
注意点
- 老齢基礎年金の満額は78万900円(2021年度)なので、年金の月額は約6.5万円です。
- 夫婦とも満額受給していても合計13万円なので、年金だけでは生活資金は大幅な赤字です。
編集部
また、老後も不動産収入などが想定される場合は、公的年金に想定される収入を加算して老後資金を計算します。
\老後資金はどうやって準備する?/
「老後の生活期間」の想定
最後に、老後の生活期間を何年にするか決めます。参考になるのは次のデータです。
ポイント
- 平均寿命:男性は81.47歳、女性は87.57歳。
- 65歳時の平均余命:男性は19.85歳、女性は24.73歳。
前述の通り、金融審議会の試算では、長生きして生活費が足りなくなるリスクに備えるため老後の生活期間を30年と想定しています。
老後の生活期間が何年になるかは予想しづらいため、20年・25年・30年の3パターンでシミュレーションする方法もあります。
編集部
老後資金のシミュレーション例
老後の生活費や収入、生活期間がわかったら、次の計算式で老後生活資金は簡単にシミュレーションできます。
ポイント
必要な老後資金=(老後の毎月の生活費-老後の毎月の収入)×老後の生活期間
次のモデルケースで、老後資金をシミュレーションしてみましょう。
ポイント
- 老後の毎月の生活費:「老後の最低日常生活費」と「ゆとりある老後生活費」の中間をとって30万円。
- 老後の毎月の収入:サラリーマン世帯は夫婦で月26万円の年金収入、自営業者世帯は月12万円の2パターン。
- 老後の生活期間:20年・25年・30年の3パターン。
サラリーマン世帯の老後資金は次の通りです。
サラリーマン世帯の老後資金
- 老後の生活期間が20年:(30万円―26万円)×240か月=960万円
- 老後の生活期間が25年:(30万円―26万円)×300か月=1,200万円
- 老後の生活期間が30年:(30万円―26万円)×360か月=1,440万円
自営業者世帯の老後資金は次の通りです。
自営業世帯の老後資金
- 老後の生活期間が20年:(30万円―12万円)×240か月=4,320万円
- 老後の生活期間が25年:(30万円―12万円)×300か月=5,400万円
- 老後の生活期間が30年:(30万円―12万円)×360か月=6,480万円
自営業者の場合は高額な老後資金が必要となる可能性が高いため、65歳以降も仕事を続けざるを得ない人も多いでしょう。
今からできる!老後資金の準備方法おすすめ3選
老後資金の準備というと、まずは貯蓄や投資などが思い浮かびますが、収入を増やすという選択肢もあります。おすすめの準備方法は、以下の3つです。
❶個人年金保険やつみたてNISAなどを活用する
貯蓄や投資の方法は多種多様ですが、長期間にわたって計画的に資金準備することが重要です。
さらに、老後資金準備を支援するために国が税制上の優遇措置を適用する制度の活用もおすすめです。
おすすめの貯蓄・投資方法
- 個人年金保険
- 個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)
- つみたてNISAなど
個人年金保険とは、一定期間の保険料を支払うことで将来の年金受給を確保する保険です。老後の生活費を安定的に支え、長寿社会に備えるために利用されます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、個人が自分の老後資産を積み立てるための制度です。自分で運用先を選び、将来の年金受給に備えます。
つみたてNISAは、株式や投資信託に積み立てる個人向けの制度です。税金優遇があり、将来の資産形成や資産運用を促進します。
編集部
自分の将来の計画に合った選択をするためには、専門家に相談することもおすすめです。
❷老後も仕事を続けることによって収入を確保する
65歳で仕事を辞めてしまうと、それ以降の生活は公的年金頼みになってしまいます。
注意点
公的年金だけで生活できない場合は貯蓄を取り崩すことになりますが、65歳から取り崩しを始めると20年~30年間も取り崩しが続き貯蓄が尽きることも考えられます。
また、仕事を続けることで、社会的なつながりを維持し、精神的な充実感を感じることもできます。退職後も活動的なライフスタイルを保つことで、孤独感を軽減できるでしょう。
❸公的年金を増やす
公的年金を増やすことも、老後資金準備に役立ちます。
公的年金(収入)の増額で老後の家計収支が改善すれば、準備が必要な老後資金は少なくて済む可能性があるからです。
公的年金を増やす方法は、次の通りです。
公的年金を増やす方法
- 夫婦とも厚生年金に加入して仕事をする。
- 65歳以降も会社勤めを継続する。
- 公的年金の繰下げ制度を利用する。
編集部
老後資金に関してよくある質問
まとまった金額を短期間で準備するのは難しいことです。早く準備を始めるほど、月々の貯金額も少なくて済みます。また必要額からさらに余裕を持つことができれば、急な出費があったときに備えることが可能です。
40代後半から50代の間に始められれば、65歳まで10~20年ほどあるので無理せず老後資金を貯めていけるでしょう。
個人の状況や目的に応じておすすめは異なりますが、老後資金の準備としてはiDeCo・NISA・個人年金保険・個人向け国債などさまざまな方法が挙げられます。もし、ご自身に合った準備方法が分からず迷われている方は、本記事でご紹介した保険相談所で専門家に無料相談されることをおすすめします。
まとめ
今回は、「老後資金はいくらあれば安心なのだろう」と疑問を感じている人に向けて、老後の生活資金の必要額を夫婦・独身のケース別に具体的な数字を用いながら解説しました。
総務省統計局の「2023年家計調査」のデータを基に試算すると、モデルケースの必要老後資金は約1,365万円です。ただし、これは持ち家や賃貸など試算の前提条件次第で必要な老後資金は大きく変わることを理解しておきましょう。
具体的に必要な老後資金は、『(老後の毎月の生活費-老後の毎月の収入)×老後の生活期間』で求められます。想定できる範囲内で老後の収支などを予想してシミュレーションしてみましょう。
編集部
人材派遣会社17年経営したのち、保険代理店に転身後16年従事、2級FP技能士・トータルライフコンサルタント・MDRT成績資格会員2度取得。 ファイナンシャルプランナーとしてライフプランニングや家計診断を通して老後資金の対策、節約術などを提案。 また自らのがん闘病経験をふまえた生きる応援・備えるべき保障の大切さをお伝えしています。
生命保険の業界歴10年。年間500世帯の相談実績。 社会保険・税金の効率化、家計・固定費の見直し、保険の新規加入・見直し、住宅購入・住宅ローン、資産形成・老後の年金対策・少額投資(iDeCo・NISAなど)、不動産投資と幅広い分野に精通。