高齢になり介護が必要になると、介護サービスや福祉用具の必要性によって費用がかかります。一説には500万円ほどもかかる*といわれる介護費用の多くは公的介護保険でカバーされます。
「公的介護保険があるから、民間介護保険は必要ない」と考える人も多いですが、公的介護保険でも全ての費用を賄えない場合があります。
そんなとき役立つのが、民間介護保険です。本記事では民間介護保険の特徴をはじめ、公的介護保険との違い、メリット・デメリットまでわかりやすく解説していきます。
編集部
民間介護保険の必要性に関するまとめ
- 民間介護保険は、公的介護保険の自己負担を支えるための保障です。公的介護保険との主な違いは支給方法で、公的介護保険はサービスを提供しますが、民間介護保険は現金支給となります。
- 特に、民間介護保険は預貯金や将来もらえる年金が少ない人、身内がいない人にとって必要性が高いと言えるでしょう。
- 介護保険には、給付内容や条件など注意すべきポイントが複数ありますので、加入の際はプロに相談することをおすすめします。
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目次
民間介護保険とは?
現在、日本では社会保険制度のひとつとして介護保険(以下、「公的介護保険」)があり、40歳以上の人はすべてこの公的介護保険制度に加入することになっています。
公的介護保険の特徴
- 強制加入ですので、保険料は公的医療保険(健康保険など)や年金保険料などと同じように、徴収されます。
- 会社員の場合、給与天引きです。
- 日常生活で介護や支援が必要な状態になったとき、そのための費用の一部を国や市町村が負担してくれる仕組みです。
しかし、要介護状態は人によってさまざまであり、公的介護保険だけですべてをカバーできるとは限りません。
編集部
民間の商品ですから、加入するかどうかは任意で、加入したいという人だけが保険会社と契約し、保険会社に保険料を払い込みます。
公的介護保険と民間介護保険の違い
公的介護保険と民間介護保険、両者の違いは以下の通りです。
公的介護保険 | 民間介護保険 | |
---|---|---|
加入方法 |
|
|
給付条件 |
|
または、
|
給付内容 |
|
|
加入方法はどう違う?
公的介護保険の加入方法
公的介護保険は、社会保険の一種として、40歳以上の人は強制的に加入することになっています。
会社員の方は40歳になると介護保険料が天引きされるようになりますし、自営業の方は市町村から届く国民健康保険の納付書に介護保険料も含まれるようになります。
公的介護保険の区別
- 65歳以上…第1号被保険者
- 40~64歳…第2号被保険者
注意
- 例外的に、64歳以下の第2号被保険者で、生活保護を受給する人は、公的医療保険料と合わせての保険料徴収ができないため、公的介護保険にも加入しない状態になります。
- 65歳以上の年金受給者は、介護保険料を支給される年金からの天引きで支払います。
公的介護保険の保険料は所得などをもとに決められます。
民間介護保険の加入方法
民間介護保険は、保険会社が販売している商品ですので、保険会社などに申し込んで加入手続きを行います。
このとき、他の保険同様に、健康状態の告知を求められ、保険会社の審査があります。
民間介護保険の特徴
- 公的介護保険が40歳から加入するものであるのに対して、民間介護保険は商品の契約可能年齢の範囲なら何歳でも加入可能です。
- 一般的には20歳から加入可能ですが、未成年から加入できる商品もあります。
保険料は年齢・性別・保障内容などから決まり、保険会社に払い込みます。
給付条件はどう違う?
公的介護保険の給付条件
公的介護保険を受給するには、まず、要介護認定という手続きを受けなくてはなりません。
<介護認定の流れ>
- 本人か家族、または代行業者などを通じて市町村の担当窓口に申請を行う
- 専門家であるケアマネジャーの訪問調査、医師の意見などをもとに、「自立(非該当)」「要支援(2段階)」「要介護(5段階)」のいずれに該当するかが判断される
- 「自立(非該当)」は、介護や支援の必要がないという意味であるため、自立と判断された場合は、認められた場合に限り介護予防のための支援だけが受けられる
- 要支援・要介護となった場合はその段階に応じて受けられる介護サービスの範囲などが決まる
注意点
- なお、重要な点として64歳以下の「第2号被保険者」については、要介護・要支援状態に至った理由ががんやリウマチなどの「特定疾病」によるものに限って認定を受けられます。
編集部
民間介護保険の給付条件
民間介護保険の給付条件は、商品によって大きく2つのタイプがあります。
民間介護保険の給付条件
- 公的介護保険に連動するタイプ
- 独自基準で判断するタイプ
公的介護保険に連動するタイプは、公的介護保険の要介護認定を受けて公的介護保険が支給されるとき、民間介護保険からの支給も受けられるというものです。
一方、独自基準で判断するタイプは、保険会社が定めた独自の基準に該当するかどうかで支給されるかどうかが決まります。
一部、公的介護保険の要介護認定の有無の基準を取り入れていたり、近い基準になっていることもあります。
しかし、あくまで別の基準のため、要介護認定を受けたのに支給されない場合もありえます。
給付内容はどう違う?
公的介護保険の給付内容
公的介護保険の給付は「現物給付」です。
実際には、介護サービスなどを受けたときの費用の一部が公的保険でまかなわれ、私たちはそれを超えたぶんの自己負担額だけを支払うという形です。
編集部
具体的には、まず、認定された要介護状態の段階に応じて支給上限額が決まり、上限額に達するまでの額については、原則1割(所得によっては2~3割)が自己負担額になります。
たとえば…
- 「要介護1」と認定された場合、月あたりの支給限度額は16万7,650円です。
- 10万円の介護サービスを受けた場合、支給限度額内ですので、実際にはその1割である1万円だけを自己負担すればよいということになります。
- この人が同じ月内にもう一度10万円のサービスを受けたら、すでに10万円のサービスを受けているので、残額である6万7,650円までが支給対象になります。
- 超えたぶんは全額自己負担になるため、この場合は、支給対象6万7,650円の1割=6,765円と、支給対象外になった3万2,350円を合わせた3万9,115円が自己負担額となります。
なお、継続的に利用する介護サービスの給付のほかに、自宅をリフォームする、福祉用具を購入するなどの場合に、一時金が受け取れる仕組みもあります。
民間介護保険の給付内容
公的介護保険が「現物給付」であったのに対して、民間介護保険の給付内容は基本的に「現金給付」です。
編集部
具体的な形は商品ごとに異なりますが、基準を満たしたときにまとまった額の一時金が支払われるものや、年金形式で定額が継続的に給付されるものなどがあります。両方を組み合わせたタイプもあります。
公的介護保険にはないものとして、加入者が亡くなった場合に死亡給付金を受け取れるものもあります。
民間介護保険に加入するメリットとデメリット
ここでは民間介護保険と公的介護保険、それぞれのメリットとデメリットを紹介していきます。
民間介護保険のメリット
40歳以下も加入でき、64歳以下の特定疾病以外でも給付を受けられる
民間の介護保険であれば、加入年齢や給付条件が公的介護保険よりも柔軟で、要件に該当すれば給付を受けることが可能です。
公的介護保険の場合…
- 公的介護保険は、原則として40歳以上の加入が義務付けられており、40歳未満の人は給付を受けることができません。
- 40歳以上であっても、40~64歳までの第2号被保険者は、一部の特定疾病を原因とする要介護状態のみが給付対象になります。
例えば、30代で事故により要介護状態になっても、公的介護保険から給付を受けることはできません(介護保険の対象にはなりませんが、障害年金など、他の社会保険で保障される可能性はあります)。
編集部
直接的な介護費用以外の出費や収入減に対応できる
公的介護保険は現物給付で、対象となる介護サービスを利用した場合、その費用の一部を給付として受けられます。しかし、対象外の出費や収入減には対応できません。
一方、民間介護保険は現金給付ですので、受け取ったお金は自由に使うことができ、使途が限定されていない点が大きなメリットです。
民間介護保険の給付金は、公的介護保険ではカバーされない要介護者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上のための出費や、介護者の収入減少に対する保障としても活用できます。
編集部
生命保険料控除の対象になる
民間の介護保険に加入すると、保険料が生命保険料控除の対象となります。生命保険料控除とは、生命保険料や介護医療保険料を支払った際に、一定額が所得控除として適用される制度です。
このため、介護保険料を支払うことで将来の介護に備えるとともに、所得税や住民税の負担を軽減できます。
民間介護保険のデメリット
基準に満たなければ支給されない
民間介護保険は、公的介護保険とは別の基準で支給されるかどうかが決まるものもあります。
支給基準のリスク
- 公的介護保険で要介護認定を受けていたとしても、保険会社の基準を満たさなければ支給されないというリスクがあります。
- 公的介護保険と連動して給付される商品も、今後、公的介護保険制度が改正されたときはそれに合わせて給付の基準が変わります。
将来的に制度の改悪がある可能性がリスクとして残ります。
加入できない場合がある
民間介護保険は保険商品ですから、加入にあたっての審査があります。
公的介護保険が社会保険制度の一環としてすべての人を対象としているのとは違い、健康状態などに問題があるとみなされれば加入できない場合があるのです。
編集部
民間介護保険の必要性が高い人・低い人
民間介護保険が必要かどうかは、ご家庭の環境によって大きく変わります。ここでは、民間介護保険が不要な人・必要な人の特徴を解説していきます。
民間介護保険の必要性が低い人
他の保険にも共通していえることですが、介護に使えるお金が十分にある人は民間の介護保険への加入は不要です。
ポイント
- 生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(令和3年度)」の調査結果によると、介護に要する費用は毎月平均で8.3万円(公的介護保険の介護サービス費用の自己負担込)と発表されています。
- 平均の介護期間が5.1年(61.1ヶ月)のため、介護費用の平均は8.3万円×61.1ヶ月=約507万円ということになります。
また、介護サービス業者と同様の世話をしてくれる家族がいるのなら、こちらも保険に加入する必要はありません。
例えば家族が介護士の資格を持っているなら、業者にお金を払わなくても同等の介護が受けられると考えられます。
編集部
民間介護保険の必要性が高い人
逆に、民間の介護保険が必要な人として、以下のような人が該当します。
民間の介護保険が必要な人
- 預貯金や公的年金が少ない人
- 介護を頼める身内がいない人
- より手厚い介護サービスを希望している人
もし面倒を見てくれる家族がいたとしても、介護は心身ともに大きな負担がかかります。
編集部
民間介護保険は何歳から加入しておくべき?
介護の必要性が気になるのは主に40代後半から50代頃と言われています。実際の統計データでも50代後半から60代前半の人たちが高い割合で介護保険に加入しています。
20代から30代の若い世代は、介護保険に加入しなくても問題ないことが多いですが、若いうちに加入すると、安い保険料で充実した保障を受けられます。老後費用を効率的に準備するために、若いうちから加入しておいても良いでしょう。
また、レジャーやアクティビティ中に怪我や事故によって若いうちから介護が必要になった場合、公的な保障が適用されないことがあります。しかし、民間の介護保険ではそのような事態にも対応できるケースがあります。
編集部
※参考:生命保険文化センター『2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査』 P71
民間介護保険を選ぶポイント
民間介護保険を検討する場合、どういった点をポイントにして選べばいいでしょうか。チェックしたいのは、以下のような点です。
民間介護保険の選び方
- 給付条件
- 給付内容
- 保険期間
- 貯蓄性の有無
給付条件
お伝えしたように、民間介護保険は、公的介護保険に連動して給付されるタイプと、独自の基準で給付されるタイプがあります。
編集部
しかし、加入した後になって「思っていたのと違う」ということにならないよう、どのような給付条件なのかはあらかじめ理解しておくことが大切です。
給付内容
給付内容も、もちろん重要です。
給付の種類
- 一時金タイプ
- 年金タイプ
- 両者の併用タイプ
一時金タイプは最初にまとまったお金が受け取れるので使い勝手が良く、介護のためのリフォームなど多額の費用を必要とするときに役立ちます。
保険期間
民間介護保険は、加入時に保険期間を選ぶことができます。
保険期間の種類
- 定期タイプ…保険期間が限られている
- 終身タイプ…保障期間が一生涯
高齢になるほど介護リスクがあり、要介護状態が何年続くか予測できない以上、終身タイプのほうが適しているといえます。
編集部
貯蓄性の有無
民間介護保険には、要介護状態にならずに保険期間が終了(終身タイプの場合は本人が死亡)しても、払い込んだ保険料は戻ってこない掛け捨てタイプと、死亡給付金や解約返戻金が受け取れるタイプがあります。
前者のほうが保険料は抑えられますが、亡くなった後に家族にお金を残したい場合は貯蓄型を検討しましょう。
民間の介護保険に関するよくある質問
まとめ
今回は「民間の介護保険は必要ないのではないか」と疑問を抱えている方に向けて、公的介護保険との違いや必要性、メリット・デメリットをわかりやすく解説しました。
日本では社会保険の一環として公的介護保険が整備されていますが、民間介護保険は特徴が大きく異なります。
公的介護保険がすべての人が対象になり、要介護認定に応じて現物給付を受けられるのに対して、民間介護保険では柔軟な用途で使うことのできる現金給付が受けられます。
両者はどちらかを選ぶというよりも、それぞれの特性を活かして、補い合う関係です。
寿命が延び、人生100年時代と言われる今、介護リスクは増しています。民間介護保険を適切に利用し、不安のない老後生活をプランニングしていきたいものです。
編集部