
iDeCo(イデコ)には多くの種類の手数料がかかります。金融機関だけでなく、国民年金基金連合会に支払うものもあり「複雑で仕組みが分からない」という人もいるでしょう。
そこで今回は、iDeCo(イデコ)の手数料について徹底解説します。手数料負けなどの損をする機会を減らすためにも、手数料についてしっかり知識を身につけましょう。
目次
iDeCo(イデコ)の手数料一覧
- 加入時・移転時手数料
- 口座管理手数料
- 給付事務手数料
- 還付事務手数料
- 信託報酬
iDeCo(イデコ)にかかる手数料は上記の5つです。それぞれの特徴や相場、支払い時期について解説していきます。
1加入時・移転時手数料
iDeCo(イデコ)に加入する人や企業型DC(企業型確定拠出年金)から乗り換える(移換する)人は、2,890円の手数料を支払わなければなりません。
iDeCo(イデコ)が個人で掛金を積み立てて運用する「個人型」なのに対して、企業型DCは企業が積み立てた掛金を従業員が運用するという内容です。
加入時にかかる手数料は、初回の掛金から引き落とされます。企業型DCから乗り換える人は、今まで積み立てた資産の中から引き落とされるケースが一般的です。
国民年金基金連合会に支払う2,890円とは別で、金融機関が加入・移転手数料を設けている場合もあります。
2口座管理手数料
口座管理手数料は、iDeCo(イデコ)の専用口座を維持するために支払う手数料です。口座管理手数料は毎月の掛金から徴収されるので覚えておきましょう。
また、口座管理手数料の内訳は以下の通りです。3種類の手数料の総称を口座管理手数料と呼びます。
種類 | 金額 | 支払先 |
事務手数料 | 毎月105円 | 国民年金基金連合会 |
資産管理手数料 | 毎月66円 | 信託銀行 |
運営管理手数料 | 金融機関によって異なる | 金融機関 |
上記の表の金額は、毎月掛金を積み立てた場合の金額です。「事務手数料」と「資産管理手数料」は毎月の掛金から必ず支払わなければならない手数料です。
2つの合計金額は毎月171円で、年間2,052円が確実に差し引かれてしまいます。仮に20年間運用した場合、最低でも41,040円の手数用がかかるのでばかになりません。
3給付事務手数料
給付事務手数料とは、iDeCo(イデコ)で積み立てた資金を受け取る際に支払う手数料です。
iDeCo(イデコ)の受け取り方は2種類の方法が代表的です。給付事務手数料も考慮しつつ受け取り方法を選択する必要がありそうですね。
iDeCo(イデコ)2種類の受け取り方法
- 一時金で受け取る方法
- 年金で受け取る方法
一時金で受け取る方法
一時金で受け取る方法とは、iDeCo(イデコ)で積み立てた資金を一括で受け取る方法です。一時金で受け取る際には「退職所得控除」が適用されます。
勤続年数に応じて控除額の計算方法が2通りに分かれます。iDeCo(イデコ)の場合、加入年数を勤続年数の代わりにします。
加入年数・勤続年数 | 退職所得控除額の計算方法 |
20年以下の場合 | 40万円×加入年数・勤続年数
(上記の結果が80万円に満たない場合は80万円控除) |
20年超えの場合 | 800万円+70万円×(加入年数・勤続年数-20年) |
参照:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)│国税庁
また、退職所得の計算方法は以下の通りです。
退職所得=(退職金などの収入の合計金額-退職所得控除の金額)×1/2
退職所得を低くできれば所得税・住民税で支払う金額を抑えられます。
年金で受け取る方法とは?
年金で受け取る方法とは、iDeCo(イデコ)で積み立てた資金を分割で受け取る方法です。通常、年金は「雑所得」として扱われ、20.315%の税率で課税されるので覚えておきましょう。
また、年金としてiDeCo(イデコ)で積み立てた資金を受け取る際には「公的年金等控除」が適用されます。
公的年金等控除とは、雑所得に対してかかる税金を抑えるためのお得な制度です。年齢と年金の収入額によって公的年金等控除額の計算方法が異なります。
年齢 | 年金の収入額(1年間) | 公的年金控除額の計算方法 |
65歳未満 | 60万超、130万円未満の場合 | 年金の収入額-60万円 |
130万以上、410万円未満の場合 | 年金の収入額×0.75-27万5000円 | |
410万以上、770万円未満の場合 | 年金の収入額×0.85-68万5000円 | |
770万以上、1000万円未満の場合 | 年金の収入額×0.95-145万5000円 | |
1000万円以上の場合 | 年金の収入額-195万5000円 | |
65歳以上 | 110万超、330万円未満 | 年金の収入額-110万円 |
330万以上、410万円未満 | 年金の収入額×0.75-27万5000円 | |
410万以上、770万円未満 | 年金の収入額×0.85-68万5000円 | |
770万以上、1000万円未満 | 年金の収入額×0.95-145万5000円 | |
1000万円以上 | 年金の収入額-195万5000円 |
雑所得の計算方法は以下をご参照ください。
雑所得=年金などの収入額-公的年金等控除額
上記の計算式で求めた雑所得に20.315%を掛け合わせた金額を納税する義務があります。
4還付事務手数料
還付事務手数料とは、iDeCo(イデコ)に加入した後に掛金を還付する機会が発生した場合にかかる手数料です。還付とは、掛金の一部、または全額を加入者に返却することを指します。
基本的に掛金を還付される機会はありませんが、念のため還付されるケースについても確認しておきましょう。
- 法令の限度額を超える掛金が積み立てられた
- 国民年金保険の未納が発覚した
- 加入資格がない人が掛金を積み立てた
上記の中でもっとも注意すべきなのは国民年金保険の未納です。納付漏れに気付かずに掛金を積み立ててしまっている人も少なくないので注意しましょう。
また、還付事務手数料の金額や支払先、支払い方法については以下の表をご参照ください。
支払先 | 金額 | 支払い方法 | |
国民年金基金連合会 | 1,048円 | 返却される金額(還付金)から差し引かれる | |
金融機関 | 440円 |
万が一還付する機会が発生してしまったら、合計1,488円の手数料が差し引かれてしまうのでくれぐれも忘れないようにしましょう。
5信託報酬
信託報酬とは、iDeCo(イデコ)の運用商品の中から投資信託を選択する場合に支払う手数料です。投資信託は、プロの投資家(運用会社)が運用や管理を行う金融商品です。
信託報酬は金融機関よって差があるので、なるべく安いところで口座開設するのがおすすめです。また信託報酬は、iDeCo(イデコ)で投資信託を運用している期間中、積み立てた掛金の総額から差し引かれています。
iDeCo(イデコ)の利益確定手数料
iDeCo(イデコ)保有している運用商品を売却(利益確定)し、新たに別の商品に投資することを「スイッチング」といいます。
スイッチングについて理解を深めるために、まずはiDeCo(イデコ)の運用商品について簡単ご紹介します。
- 保険・定期預金(元本保証型):元本割れするリスクがない
- 投資信託(元本変動型):元本割れする可能性がある
※元本割れとは、投資信託などの金融商品を運用している最中に、購入時の価格より価値が下回ってしまう状況を指します。
複数の運用商品を組み合わせて資産運用ができるiDeCo(イデコ)では、戦略的にスイッチングをすれば資産を膨らませるのに効果的です。
たとえば、投資信託を運用してある程度の利益が確定している場合に、投資信託を売却して元本保証型の定期預金・保険に投資するといった方法が有効です。
信託財産留保額に注意
スイッチングに手数料がかかるかは金融機関によって異なるので、口座開設前に必ず確認しましょう。
また、投資信託を売却するために「信託財産保留額」が設定されている可能性があります。信託財産保留額とは、投資信託を売却する際に支払う売却手数料のことです。
投資信託に信託財産保留額が設定されている場合、基準価格の〇%と記載されています。基準価格は投資信託の一口、または一万口あたりの価格です。
スイッチングの回数に注意
スイッチングができる回数は、金融機関ごとに回数制限が設定されています。また、あまりにも頻繁にスイッチングするのはおすすめできません。
スイッチングに対して自分ルールを設けてみるといいでしょう。「半年に1回まで」や「年に1度きり」など自分で決めたルールの中で行うのがおすすめです。
iDeCo(イデコ)の配分変更手数料
iDeCo(イデコ)の運用商品を変更する方法には、スイッチングだけでなく「配分変更」という方法もあり、こちらには手数料はかかりません。
スイッチングの違いは運用商品を売却しないところで、配分変更は運用方針の変更を目的としています。
スイッチングが過去に購入した運用商品に手を付けるのに対して、配分変更は今後の方針を変更することだと言えます。
もし今後の方針も変更すると同時に、過去に購入した運用商品の割合も変更したいのであれば、スイッチングと配分変更の両方を行う必要があります。
iDeCo(イデコ)で手数料負けして損するケース
iDeCo(イデコ)の掛金を低く設定してしまうと手数料負けする可能性があります。]手数料負けとは、iDeCo(イデコ)で支払うさまざまな手数料の金額が運用益を下回るようなケースを指します。
- 仮に毎月の掛金を最低ラインである5,000円・口座管理手数料が500円だとします。
- 掛金に対する口座管理手数料の割合は「5,000円÷500円」なので10%です。
- 上記のような場合、手数料負けしないためには10%を上回る運用益を生み出す必要があります。
基本的に10%以上の運用益を出し続けるのは現実的ではありません。要するに、ある程度の掛金で運用しなければiDeCo(イデコ)の手数料に利益を相殺されてしまうということです。
また、iDeCo(イデコ)で損をしてしまうケースは他にもあります。
iDeCo(イデコ)で損するケース
- 年末調整・確定申告を忘れる
- 信託報酬が割高な投資信託を選ぶ
年末調整・確定申告を忘れる
iDeCo(イデコ)の代表的なメリットは節税対策です。ですが、年末調整・確定申告で積み立てた掛金の総額を申請しない限り、所得控除を受けられません。
会社員の人なら年末調整時、自営業の人なら確定申告で1年間積み立てた掛金の総額を申請しましょう。
会社員の人なら年末調整時に申請し忘れてもまだ一度だけチャンスがあります。年末調整で申請し忘れた会社員の人は自分で確定申告すれば問題ありません。
したがって12月の年末調整で申告するのを忘れたとしても、翌年の確定申告期間に個人で申請すれば所得控除を受けられるということです。
●確定申告に必要なもの
また、確定申告に必要な持ち物は以下の通りです。
- 源泉徴収票
- マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカード、住民票の写しなど)
- 身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
- 小規模企業共済等掛金払込証明書
確定申告の時期を過ぎてしまうと所得控除を受けられなくなります。会社員・自営業者の両者ともに必要なものを事前に把握して準備しておきましょう。
信託報酬が割高な投資信託を選ぶ
信託報酬の高い銘柄を選んだ場合にも、手数料負けしてしまう可能性は十分にあるので注意しましょう。
iDeCo(イデコ)の投資信託を選ぶ際に、最も重要なポイントは「信託報酬の安さ」です。信託報酬は公表されているので、事前に比較することが大切です。
主要ネット証券のiDeCo(イデコ)手数料を比較
ここでは、主要ネット証券におけるiDeCo(イデコ)の手数料を比較します。運営管理手数料と加入時手数料を掲載。さらに、iDeCo(イデコ)の運用商品数もまとめています。
運営管理手数料 | 加入時手数料 | 運用商品数 | |
SBI証券 | 0円 | 2,829円 | 83 |
楽天証券 | 0円 | 2,829円 | 32 |
松井証券 | 0円 | 2,829円 | 40 |
マネックス証券 | 0円 | 2,829円 | 27 |
auカブコム証券 | 0円 | 2,829円 | 26 |
※情報は2021年9月11日時点・各社公式サイトのものです
iDeCoの口座開設におすすめなネット証券
iDeCoを始めるには、口座開設をしなければいけません。どこの金融機関(運営管理機関)で口座開設をするかは自分で選べ、どの金融機関を選んでも節税のメリットは変わりません。
iDeCoを始められる金融機関は主に、銀行・保険会社・証券会社の3種類。200社以上の金融機関で口座開設ができると言われています。
この中でもおすすめ且つ最近人気なのが、手数料が安く商品数(銘柄数)が豊富な「ネット証券」です。ここからは、iDeCoを始めるのにおすすめなネット証券を紹介していきます。
SBI証券のiDeCo
- 運営管理手数料が無料
- 取り扱い商品数は83本
- 様々なニーズに応える豊富な商品ラインナップ
- 加入者数No.1!10年を超える実績があるから安心※1
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SBI証券のiDeCoは、加入者数が最も多い※1人気なネット証券です。iDeCoを始めるといくつか決まった手数料がかかりますが、運営管理手数料は各金融機関によって異なります。

商品数も業界最多クラスに多く、元本確保型の定期預金・保険から、投資信託は国内外(新興国を含む)の株式・債券・REIT、バランス型ファンドと多様に取り揃えています。
また、現在新規申し込みが可能な「セレクトプラン」では、低コストでリターンがしっかり望めるインデックスファンドを豊富に取り揃えているのも魅力です。
公式サイトでは、iDeCoに関するコラムや運用商品のセミナー動画などを公開。自分に合った商品選びのお手伝いをしてくれる「SBI-iDeCoロボ」サービスもあります。
SBI証券は、運用コスト・商品ラインナップ・サポート体制の3つのポイントから総合的にみて、iDeCo初心者におすすめできるネット証券です。
口座管理手数料 | 171円/月 |
運営管理手数料 | 0円 |
プラン/取扱商品数 | ・オリジナルプラン/67本※3 ・セレクトプラン/37本 |
ポートフォリオ診断機能 | ありfa-arrow-circle-right |
サポートデスク | 平日および土曜日・日曜日:8:00〜17:00※4 |
実施中のキャンペーン | 抽選で1,500名様にAmazonギフト券最大10万円分が当たる※2 |
※1:2021年7月 SBI証券調べ
※2:2021/12/20~2022/3/17まで(WEB申し込みの場合)
※3:2021年1月4日に新規の受付を停止
※4:年末年始、祝日を除く
マネックス証券
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- オリコン顧客満足度®︎「iDeCo 証券会社」ランキング3年連続総合1位
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マネックス証券は、オリコンが実施する「iDeCo 証券会社」顧客満足度®︎ランキングにおいて、調査開始以来、総合第1位を取り続けているネット証券です。
サポート体制・サイトの使いやすさなどを含む5項目で高得点を獲得しており、中でも取扱商品の項目では、楽天証券やSBI証券を抑えて最も高い評価を受けています。

運営管理手数料は、誰でも・いつでも・いつまでも0円。口座管理手数料は、業界最安水準の171円です。
マネックス証券では、初めての方でも安心して始められるよう、土曜日も対応してくれるiDeCo専用ダイヤルがあります。
商品選びに迷ったら、5つの質問に答えるだけで最適な運用プランを提案してくれる「iDeCoポートフォリオ診断」がサポートしてくれるので、ぜひ試してみてくださいね。
口座管理手数料 | 171円/月 |
運営管理手数料 | 0円 |
取扱商品数 | 27本 |
ポートフォリオ診断機能 | ありfa-arrow-circle-right |
iDeCo専用ダイヤル | 平日:9:00〜20:00、土曜日:9:00〜17:00※ |
実施中のキャンペーン | - |
まとめ
ここまで、iDeCo(イデコ)の手数料について解説してきました。
手数料は国民年金基金連合会だけでなく金融機関に支払う場合あるので、口座開設前に金融機関の手数料を比較してみるのがおすすめです。あらかじめ調査しておけば手数料負けで損をする可能性を減らせます。
また、スイッチングや分配変更は定期的に行いましょう。面倒かもしれませんが、老後資産を効率よく形成するためには必須の作業です。
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