出産に適用される医療保険とは?自然分娩でもお金はもらえる?
今回は、「出産」に公的な医療保険が適用されるのか、適用されない場合、費用をカバーする仕組みはあるのか、について解説します。
この記事の要点
- 1.出産時、自然分娩の場合は健康保険の適用外で、異常分娩の場合は健康保険が適用される
- 2.民間の医療保険の場合も保険会社が定める条件を満たした場合は保険金支払いが適用される
- 3.妊娠判明後に民間の医療保険に加入することは可能だが、加入の意思がある場合は妊娠する前に加入しておくと安心
- 4. 医療保険選びで迷っている人は、保険相談窓口で専門家に相談しながら検討してみるのがおすすめ
- 5. 保険相談窓口「ほけんのぜんぶ」では、40社以上の保険商品から専門家があなたにぴったりの保険をご提案します。
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出産費用は医療保険が適用される?
医療保険には「健康保険」「国民健康保険」に代表される公的医療保険のほか、保険会社が提供している民間の医療保険もあります。
公的な医療保険
結論からいうと、出産は公的な医療保険が適用されることも、されないこともあります。
公的医療保険が適用されるかどうかの違いは、「正常分娩」「異常分娩」のどちらに分類されるかによって異なります。
正常分娩
ポイント
- 妊娠や出産は病気ではないことから、自己負担が医療費の3割になる「療養の給付」の対象にはなりません。
- 自然分娩においては、医療費を含む入院費用の全額が自己負担になります。
- 詳しくは後述しますが、自然分娩に関する費用は約50万円がかかるといわれています。
なお、出産する場所によっても費用は変わることを知っておきましょう。
注意点
- 病院の規模、サービスの違いによって同じ内容の入院でも請求される医療費が変わります。
- 一般的に個人病院がもっとも費用がかかり、次いで総合病院、大学病院、もっとも費用が安くなりやすいのは「助産院」です。
- また、病院の規模にかかわらず、専門性が高い医療行為が可能な病院や食事・個室などの付帯サービスが充実していると費用が高くなる傾向があります。
ただし、安ければ何でも良いということではありません。
助産院は費用が安くなる代わり、「医療行為」はできません。
異常分娩
下記のような分娩は「異常妊娠」「異常分娩」と呼ばれており、公的な医療保険の対象です。
公的医療保険の対象になる項目
- 妊娠糖尿病
- 妊娠高血圧症候群
- 重度の「つわり」
- 子宮外妊娠
- 鉗子分娩
- 吸引分娩
- 帝王切開
- 陣痛促進剤を使用しての分娩
- 流産 など
自己負担は、かかった医療費の3割です。
出産に関しては母体と子どもの健康を考えたベストな分娩方法がとられるため、直前になって分娩方法が変更されることも珍しくありません。
費用は「母体や胎児の状態」「処置の種類」「入院日数」などによっても異なりますが、入院、手術、投薬に関する費用は全て保険適用です。
注意点
- ただし、食費や個室などを希望する場合の差額ベッド代は全額自己負担で支払う必要があります。
- 「高額療養費制度」によって、所得に応じて1ヶ月あたりの自己負担額に上限が設けられることも覚えておきましょう。
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民間の医療保険
保険会社が提供している民間の医療保険では、異常妊娠や異常分娩の治療の条件を満たすことで保険金支払いが適用されます。
ポイント
- 入院給付金・手術給付金を受け取ることが可能です。
- 公的な一時金を受け取ったとしても減額されることはありません。
公的保険と異なる点は、加入している保険商品によって保障の範囲や給付される金額が異なることです。
民間医療保険の必要性
異常分娩では処置後の経過も含めて正常分娩よりも入院日数が長くなりがちであり、医療保険の給付金が果たす役割は大きいといえるでしょう。
入院給付金は入院日数に応じて受け取ることができ、1日5,000円、1万円という金額に入院した日数分を掛けた合計額を受け取ることができます。
さらにプラスして「手術給付金」まで受け取れます。
(※保険会社によっては、申込時に手術給付金の有無を選択する商品があります。手術給付金が付加されているかは、パンフレット等でご確認ください。)
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出産時に適用される公的医療保険制度
ポイント
- 出産手当金
- 出産育児一時金
- 高額療養費制度
- 医療費控除
これらについて詳しく見ていきましょう。
出産手当金
出産のために会社を休み、給与を受けられなかった場合に出産の日(実際の出産が出産予定日より後の場合は、予定日以降の日数もプラス)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の翌日以後56日までにわたって給付を受けられます。
出産手当金の支給額
出産手当金の支給額の計算式は、以下のとおりです。
支給開始日以前の加入期間が12ヶ月に満たない場合の支給額は、次のいずれか低い額を使用して計算します。
- 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額
- 標準報酬月額の平均額
出産手当金の注意点
出産手当金に関して、平成28年4月から、傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多い場合はその差額を支給するように変わっています。
また、退職などで資格喪失する前日までの被保険者期間が1年以上あり、被保険者の資格喪失の前日に現に出産手当金を受けているか受けられる状態であれば、資格喪失後も所定の期間の範囲内で引き続き支給を受けることができます。
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出産育児一時金
自然分娩・異常分娩にかかわらず、妊娠4ヶ月以上で出産した場合に子ども1人につき42万円が支給されます。
注意点
- ただし、医療機関でも産科医療補償制度に加入していない場合は、受け取れる金額は40.4万円になってしまうことに注意が必要です。
高額療養費制度
高額療養費制度の対象になる場合とは
- 異常分娩で健康保険の自己負担3割が適用になったとき
- 全額自己負担の正常分娩では適用になりません
「70歳未満」「70歳以上」で自己負担額が異なりますが、出産に関係する「70歳未満の区分」に絞って以下でご紹介します。
所得区分 | 自己負担限度額 |
---|---|
① 区分ア (標準報酬月額83万円以上の方) | 252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1% |
② 区分イ (標準報酬月額53万〜79万円の方) | 167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1% |
③ 区分ウ (標準報酬月額28万〜50万円の方) | 80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1% |
④ 区分エ (標準報酬月額26万円以下の方) | 57,600円 |
⑤ 区分オ(低所得者) (被保険者が市区町村民税の非課税者等) | 35,400円 |
高額療養費制度の注意点
高額療養費制度の注意点は、以下の通りです。
注意点
- 高額療養費制度はあくまで『払い戻し』の制度であること
- 申請に期限があること
高額療養費制度は、原則として一時的に全額を支払い、一般的に2~3ヶ月後に払い戻しされます。
また、申請には診療を受けた月の翌月の初日から2年間という期限がありますので、期限に間に合うように申請することが必要です。
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医療費控除
ポイントは「正常分娩(自然分娩)でも対象になる」ということで、高額療養費の対象にならない自然分娩でも実質的に医療費を抑えることができます。
注意点
- ただし、会社員であっても「確定申告」が必要です。
- 所轄の税務署で必要書類を提出することで税金の払い戻しが行われます。
- 確定申告を行わないと払い戻しを受けることができません。
金額計算の際は、健康保険負担分や出産育児一時金は差し引いて計算します。
出産の際に必要となる費用
公益社団法人国民健康保険中央会による平成28年の調査によれば、病院での正常分娩(自然分娩)にかかる費用の平均は以下のとおりです。
項目 | 平均値 | 中央値 |
入院日数 | 7日 | 6日 |
入院料 | 14万5,741円 | 15万円 |
室料差額 | 1万8,521円 | 0円 |
分娩料 | 23万1,318円 | 21万9,000円 |
新生児管理保管料 | 4万5,742円 | 4万8,000円 |
検査・薬剤料 | 1万3,630円 | 1万1,730円 |
処置・手当料 | 1万2,682円 | 3,000円 |
産科医療補償制度 | 1万5,776円 | 1万6,000円 |
その他 | 2万8,243円 | 1万7,640円 |
妊婦合計負担額 | 51万1,652円 | 49万7,340円 |
引用元:公益社団法人国民健康保険中央会|正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)
差額ベッド代は利用者が希望しなければかからないため、そこは差し引いて考えれば良いでしょう。
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妊娠中に医療保険に加入できる?
厚生労働省のデータによれば、帝王切開の手術割合は徐々に高くなっています。
(単位=%)
年次 | 一般病院 | 一般診療所 |
平成5年 | 13.8 | 9.1 |
平成11年 | 17.4 | 11.4 |
平成17年 | 21.4 | 12.8 |
平成23年 | 24.1 | 13.6 |
平成29年 | 25.8 | 14.0 |
出典:厚生労働省|平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況|20Pから作成
もし加入する意思があれば、妊娠中ではなく「妊娠前」に加入してしまいましょう。
注意点
- 妊娠中は、妊娠前よりもリスクが高くなると判断されるのが原則です。
- 妊娠後の一定期間内でも民間の医療保険に加入できますが、それを過ぎるとトラブルが起こる確率が高まることによって加入できなくなることがあります。
- 加入できたとしても「特定部位不担保」とされ、妊娠・出産に関しては保険の対象外になります。
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まとめ
今回は「出産に公的医療保険が適用されるのか」について解説しました。
母体自身の力で出産する「自然分娩」は病気ではないため、入院しても健康保険の自己負担3割の対象外です。
一方で帝王切開をはじめとした「異常分娩」に関しては自己負担が3割になり、高額療養費制度で一定額以上の払い戻しも受けられます。
とはいえ異常分娩は入院期間が長引きやすく、保険適用でも食事代・個室の差額ベッド代なども含めると出費はふくらみます。
万が一異常分娩になった場合の費用を試算し、預貯金からの捻出が難しそうであれば積極的に医療保険への加入を検討しましょう。
・本コンテンツは情報の提供を目的としており、保険加入その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
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