遺族年金とは?いくらもらえる?受給条件と期間・計算法等を解説
遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その遺族がもらえる年金のこと。配偶者の年金によって生計を維持していた方のための年金制度です。
名前だけなら知っている方も多いと思いますが、「いくらもらえるのか?」「配偶者の死亡からいつまでもらえるのか?」といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、遺族年金制度の内容を紹介。もらえる条件や金額の目安についても詳しく解説します。
この記事の要点
1.遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入している人(または加入していた人)が亡くなったとき、遺族に対して支給される公的年金です。
2.受給できる遺族年金の種類と金額は亡くなった人が加入していた年金制度と、遺族の家族構成や年齢によって異なるため、年金事務所などで確認しましょう。
3.いざという時、遺族年金をいくらもらえるか確認しておくことで、将来の資金計画や生命保険で準備すべき保障額が明確になります。
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遺族年金とは?わかりやすく解説します
遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入している人(または加入していた人)が亡くなったとき、遺族に対して支給される公的年金の1つです。
主な遺族年金は次の2つです。
ポイント
- 遺族基礎年金
- 遺族厚生年金
亡くなった人が加入していた年金制度と、遺族の家族構成や年齢によって支給される年金の種類や金額が異なります。
遺族年金は18歳未満の子どもがいる遺族に支給される
支給要件には、亡くなった人の要件と遺族の要件の2つがあります。
亡くなった人の要件
遺族基礎年金は次の要件を満たす人が亡くなった場合に支給されます。
ポイント
- 被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あること
- 65歳未満の場合は、死亡日の前日において所定の保険料納付要件を満たしていること
基本的に、遺族年金は国民年金または厚生年金に25年以上加入した人(保険料を納付した人)が死亡した場合に支給されます。
しかし、若い時に亡くなった場合は25年以上も公的年金に加入できないため、所定の保険料納付要件を満たした人も対象になります。
保険料納付要件は、次の2つのいずれかを満たすことです。
ポイント
- 死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間(※)の3分の2以上あること。
- 死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がないこと(令和8年4月1日前までの特別措置)
※「国民年金加入期間」は、20歳になった月から死亡した月の前々月までの期間
少しわかりにくいですが、基本要件は、これまで支払うべき保険料のうち2/3以上を納付していることです。
基本要件を満たしていない場合、令和8年4月1日前までの特別措置として、直近1年間の保険料を滞納していなければ、要件を満たしていることになります。
参考:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
遺族の要件
遺族の要件は、亡くなった人によって生計を維持されていた次の遺族がいることです。
ポイント
- 子のある配偶者
- 子(配偶者がいない場合など)
「生計を維持されている」とは、次の要件を満たす場合をいいます。
ポイント
- 同居していること(別居でも、仕送りをしている場合などは要件を満たしています)
- 遺族の前年の収入が850万円未満(または所得が655万5,000円未満)であること
- 「子」とは次の要件を満たす子どもです。
- 18歳になった年度の3月31日までの間にある子ども(高校卒業前の子ども)
- 20歳未満で、障害等級1級または2級の障害状態にある子ども
- 婚姻していないこと
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遺族厚生年金は厚生年金加入者が亡くなったときに支給される
次は、遺族厚生年金の支給要件について説明します。
遺族厚生年金の支給も、亡くなった人と遺族が所定の要件を満たす場合に限られます。
亡くなった人の要件
遺族厚生年金は、次の要件のいずれかを満たす人が亡くなった場合に支給されます。
ポイント
- 厚生年金に加入中の人が死亡したとき、または加入中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき(※)
- 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき
- 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき
※遺族基礎年金と同様の保険料納付要件を満たした人が対象。
参考:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
遺族の要件
遺族の要件は、亡くなった人によって生計を維持されていた次の遺族がいることです。
ポイント
- 妻
- 子、孫(※1)
- 55歳以上の夫、父母、祖父母(※2)
※1:子や孫の年齢要件は、遺族基礎年金の子の要件と同じ。
※2:夫、父母、祖父母が遺族厚生年金を受給できるのは60歳以降。
子がいる厚生年金加入者が亡くなったときは両方が支給される
子がいる厚生年金加入者が亡くなった時は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の支給要件を満たすため、両方の遺族年金が支給されます。
また、遺族が子のない妻ならば、支給される遺族年金は次の通りです。
ポイント
- 国民年金のみの加入者が死亡したとき:遺族年金は支給されない
- 厚生年金加入者が死亡したとき:遺族厚生年金が支給される
会社員の妻なら遺族厚生年金が支給されますが、自営業者の妻は夫死亡後の生活を自力で支えなければなりません。
国民年金のみの加入者が死亡した場合、加入状況によっては死亡一時金、または寡婦年金(妻のみ)が支給されますが、死亡一時金は最大32万円、寡婦年金は最長5年間で生活の支えとなるほどの支給はありません。
保険料の納付月数 | 死亡一時金額 |
---|---|
36月~180月未満 | 12万円 |
180月~240月未満 | 14万5,000円 |
240月~300月未満 | 17万円 |
300月~360月未満 | 22万円 |
360月~420月未満 | 27万円 |
420月以上 | 32万円 |
支給期間 | 60歳から65歳 |
---|---|
年金額 | 夫の老齢基礎年金額の3/4 |
参考:日本年金機構「寡婦年金」
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遺族年金はいつまで受け取れる?
遺族年金の概要と支給要件について説明してきましたが、年金はいつまで受け取れるのでしょうか。
夫が死亡して妻が遺族年金を受け取るケースについて解説します。
遺族基礎年金は子どもが高校卒業するまで受け取れる
遺族基礎年金受け取れる期間は、次の通りです。
ポイント
- 末子が18歳になった年度の3月31日まで(子どもが高校を卒業するまで)
- 障害等級1級または2級の障害状態にある子どもが20歳に達するまで
遺族基礎年金が支給されるのは、支給要件を満たす子どもがいる間だけです。
要件を満たす子どもが婚姻した場合も同様です。
遺族厚生年金は一生涯受け取れる
遺族基礎年金が子どもの高校卒業とともに打ち切られるのに対し、遺族厚生年金は一生涯受け取れます。
ただし、厚生年金の受給権は次の場合に失権します。
ポイント
- 遺族厚生年金の受給権者が婚姻した場合
- 遺族厚生年金の受給権者が養子になった場合 など
また、遺族年金以外の公的年金を受給する場合、遺族厚生年金が支給停止になるケースもあります。
中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算
遺族年金の受給期間について、覚えておきたいのが中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算です。
ポイント
- どちらも、年金を受け取る妻の遺族厚生年金に加算されるものです。
- 妻が死亡して夫が遺族厚生年金を受け取る場合は、これらの加算はありません。
引用:年金住宅福祉協会「中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算の具体的な支給額は?」
中高齢寡婦加算は40歳から65歳になるまで
中高齢寡婦加算は、次に該当する40歳から65歳になるまでの妻の遺族厚生年金に加算されます。
ポイント
- 夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、高校卒業前の子ども(または20歳未満の障害状態にある子ども)がいない妻
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子どもが高校卒業(または障害状態にある子どもが20歳到達)のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき
中高齢寡婦加算の額は、家族状況や年齢に関係なく一律58万5,700円(令和3年4月以降、同様)です。
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経過的寡婦加算は65歳以降一生涯
経過的寡婦加算とは、65歳以上の妻が受給する遺族厚生年金に加算されるものです。中高齢寡婦加算を受け取っていた妻が65歳になると、中高齢寡婦加算の代わりに経過的寡婦加算が加算されることもあります。
経過的寡婦加算が加算される要件は、亡くなった夫が厚生年金に20年以上加入していたことです。加算額は妻の生年月日によって次の通りです。
表は横にスライドできます
妻の生年月日 | 加算額 | 妻の生年月日 | 加算額 |
---|---|---|---|
大正15年4月2日~昭和2年4月1日 | 585,700円 | 昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 | 273,340円 |
昭和2年4月2日~昭和3年4月1日 | 555,665円 | 昭和18年4月2日~昭和19年4月1日 | 253,817円 |
昭和3年4月2日~昭和4年4月1日 | 527,856円 | 昭和19年4月2日~昭和20年4月1日 | 234,295円 |
昭和4年4月2日~昭和5年4月1日 | 502,032円 | 昭和20年4月2日~昭和21年4月1日 | 214,772円 |
昭和5年4月2日~昭和6年4月1日 | 477,990円 | 昭和21年4月2日~昭和22年4月1日 | 195,250円 |
昭和6年4月2日~昭和7年4月1日 | 455,550円 | 昭和22年4月2日~昭和23年4月1日 | 175,727円 |
昭和7年4月2日~昭和8年4月1日 | 434,558円 | 昭和23年4月2日~昭和24年4月1日 | 156,205円 |
昭和8年4月2日~昭和9年4月1日 | 414,878円 | 昭和24年4月2日~昭和25年4月1日 | 136,682円 |
昭和9年4月2日~昭和10年4月1日 | 396,391円 | 昭和25年4月2日~昭和26年4月1日 | 117,160円 |
昭和10年4月2日~昭和11年4月1日 | 378,991円 | 昭和26年4月2日~昭和27年4月1日 | 97,637円 |
昭和11年4月2日~昭和12年4月1日 | 362,586円 | 昭和27年4月2日~昭和28年4月1日 | 78,115円 |
昭和12年4月2日~昭和13年4月1日 | 347,092円 | 昭和28年4月2日~昭和29年4月1日 | 58,592円 |
昭和13年4月2日~昭和14年4月1日 | 332,435円 | 昭和29年4月2日~昭和30年4月1日 | 39,070円 |
昭和14年4月2日~昭和15年4月1日 | 318,550円 | 昭和30年4月2日~昭和31年4月1日 | 19,547円 |
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 | 305,377円 | 昭和31年4月2日~ | ― |
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 | 292,862円 |
経過的寡婦加算は、昭和31年4月1日までに生まれた妻に対して支給されるものです。
昭和31年4月2日以降に生まれた妻には加算はありません。
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遺族年金はいくら受け取れる?【シミュレーション】
最後に、遺族年金はいくら受け取れるのかモデルケースを使ってシミュレーションしてみましょう。
モデルケース
- 死亡した夫:40歳、厚生年金20年加入、報酬比例部分の年金額120万(※)
- 遺族の妻:夫死亡当時38歳、昭和58年生まれ、厚生年金加入なし
- 遺族の子:夫死亡当時14歳(4年後に高校卒業)
※厚生年金の加入が25年未満のため、厚生年金加入期間300月(25年)とみなして計算。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の計算方法は次の通りです。
- 遺族基礎年金=78万900円+子の加算(※)
- 遺族厚生年金=夫の報酬比例部分の年金額✕3/4
※第1子・第2子は各22万4,700円、第3子以降は各7万4,900円
上記の計算式をモデルケースに当てはめると年金額は次の通りです。
- 遺族基礎年金=78万900円+22万4,700円=100万5,600円
- 遺族厚生年金=120万円✕3/4=90万円
遺族厚生年金に対する加算額は次の通りです。
- 中高齢寡婦加算:58万5,700円
- 経過的寡婦加算:0円
妻が受け取る年金額は次の通りです。
| ・妻38歳~42歳(4年間) | ・妻43歳~64歳(21年間) | ・妻65歳以降(一生涯) |
---|---|---|---|
受給する年金 | ・遺族基礎年金(100万5,600円) ・遺族厚生年金(90万円) | ・遺族厚生年金(90万円) ・中高齢寡婦加算(58万5,700円) | ・遺族厚生年金 (90万円) ・経過的寡婦加算 (0円) |
年金額合計 | ・190万5,600円 | ・148万5,700円 | ・90万円(※) |
※妻が65歳以上になると老齢基礎年金が支給開始。妻に老齢厚生年金の受給権がある場合、遺族厚生年金は減額。(詳細は下記リンクで確認下さい)
参考:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」 / 「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
夫が国民年金のみに加入している場合、妻が42歳になるまで遺族基礎年金を受け取れますが、以降の遺族年金はありません。
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まとめ
遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入している人(または加入していた人)が亡くなったとき、遺族に対して支給される公的年金です。主な遺族年金と加算は次の通りです。
ポイント
- 末子が高校卒業するまで受け取れる遺族基礎年金
- 死亡した人が厚生年金に加入していた場合に受け取れる遺族厚生年金
- 40歳から65歳になるまでの妻の遺族厚生年金に加算される中高齢寡婦加算
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